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2025.09.01

WING

防衛省26年度概算要求額は8兆8454億円に

 無人機防衛「SHIELD」、次期防衛通信衛星など着手

 防衛省は、5ヵ年43.5兆円で計画する防衛関係費のうち、4年目となる2026年度概算要求で前年度予算額より4.4%増となる8兆8454億円になると発表した。SACO関係費や、可動数向上・弾薬確保関係経費、人的基盤強化の一部経費などは事項要求とした。計画する重点ポイントの中でも注目されるのは、多種多様な無人アセットを取得して構築する多層的沿岸防衛体制「SHIELD」だ。そのほか次期防衛通信衛星などの整備に新たに着手し、継続して次期戦闘機開発などに取り組む。
 さらに抜本的に強化した防衛力を動かすのにふさわしい組織体制の強化を図る。空自では、これまで規模を拡大してきた宇宙領域の部隊をさらに拡充して宇宙作戦集団(仮称)を新編。その上で航空自衛隊を改称し、「航空宇宙自衛隊(仮称)」への改編を目指すとしている。陸自では、南西地域の防衛を強化するために第15旅団の規模を拡大し、第15師団への改編を予定する。
 また、防衛省・自衛隊がこれまで重視して取り組んできた人的基盤の抜本的強化については、引き続き自衛官の処遇改善や、老朽化した隊舎を改修するなど生活・勤務環境の改善、若年定年退職者給油金の水準引上げなどを行う予定。関係閣僚会議で示された基本方針に基づいて関連事業費7658億円を要求して、自衛官として継続して働ける環境づくりに力を入れる。
 それらの事業によって、「国家防衛戦略」および「防衛力整備計画」に基づく防衛力の抜本的強化を推進し、格段に厳しさを増している安全保障環境に対応していく構えだ。

 安価・大量の無人アセットを活用
 複数まとめて管制する実証実験も実施

 防衛力の抜本的強化のために重点的に取り組む7分野のうち、無人アセット防衛能力については、新たな沿岸の防衛体制となるSHIELDの構築を目指す。これは、Synchronized, Hybrid,Integrated and Enhanced Littoral Degenseの略で、これまで大きく変化した戦闘様相に合わせて相手侵攻部隊から日本を守るため、有人アセットだけでなく安価かつ大量の無人アセットを活用し、それらを組み合わせて構築する多層的な防衛体制のこと。無人航空機(UAV)や、無人水上艇(USV)、無人潜水機(UUV)など、最新の技術を備えた各アセットを短期間で大量に取得して戦力にしなければいけない。
 SHIELD構築のための要求額は1287億円で、27年度中に体制構築を目指す。新規に取得を目指すのは、陸自のUAVとして、一人称視点の操作で近距離の情報を収集するモジュール型UAVと、中距離で敵艦艇などを攻撃する小型攻撃用UAVII型、さらに遠距離の敵艦艇を攻撃するUAVIII型。これまで取得してきた車両など近距離で攻撃するUAVI型は、継続して取得を目指す。海自が新規取得を目指すのは、敵艦艇を攻撃する水上艦発射型UAVだ。また警戒監視能力強化や攻撃が可能な艦載型UAV(小型)は、引き続き求めていく。空自では、新規に長距離飛行する艦艇攻撃用UAVや、敵のUAVからレーダーサイトを守るUAVの取得を目指す。
 さらにUSVでは、陸・海として敵艦艇を攻撃可能な小型多用途USVの新規取得や、UUVとして陸自で艦艇の情報を収集する小型多用途UUVの取得を図る。
 また多量の無人機をコントロールするため、無人アセットを一元的に管制するシステムが必要になる。そこでアセットの取得とは別に23億円を要求して、多数アセットの同時管制を行う実証試験を行う予定だ。

※図=SHIELDの運用構想(提供:防衛省)