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2025.08.20

WING

JAL、パイロットが同僚支えるメンタルケアプログラムに力

 所属パイロットの多くが利用経験、昨年は1700人実績

 日本航空(JAL)は、カウンセリングに関する教育を受けた運航乗務員(パイロット)が、同僚が抱える仕事や私生活の悩みを聞き、メンタルをケアする「JALピアサポートプログラム(JPSP)」制度の運用に力を入れる。パイロットは、不規則な勤務や定期的な試験、多くの命を預かることへの重圧などで精神への負荷が大きい。メンタルヘルスの知識を持ち、かつ同じ環境で働く同僚がいつでも相談に乗れる体制を敷くことで、業務からの離脱を未然に防ぐ狙いだ。組織を会社や組合から独立させ、個人情報保護と制度の周知を徹底することで、「2024年度は、軽い雑談をするだけといったケースが大半だが、1700人弱の利用にこぎ着けた」(JAL運航本部787運航乗員部・JALピアサポートプログラム広報担当・長谷川奨副操縦士)。悩みが深刻化する前にコミュニケーションをとり早期解決するのが目的で、「とにかく気軽に来てもらい、将来的にはパイロットのほとんどが利用する」ような制度を目指す。
 ピアサポートの導入は、欧州のエアラインを中心に広がりをみせている。契機となったのは、2015年3月に起きた独格安航空ジャーマンウィングス機の事故。メンタルに問題があったとされる副操縦士が、機長がトイレに行くため席を外した隙にコックピットに鍵をかけ、機体を意図的に仏アルプス山中に墜落させた。パイロットのメンタル問題が国際的に注目されるきっかけとなり、欧州では全航空会社へのピアサポートの導入が義務化された。米国や日本でも国の指針で導入が推奨されるなど、各国で制度の普及が進みつつある。

※写真=取材を受ける長谷川奨副操縦士