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2025.08.12

WING

第230回「日本が危ない」来る台湾侵攻への意思示せ

 中国人民解放軍の最高幹部が相次いで粛清されている。このことは中国による台湾侵攻に影響を与えるのか。米誌フォーリン・アフェアーズ(7月18日)で、米マサチューセッツ工科大学(MIT)安全保障研究プログラムディレクターのテイラー・フラベルが導きだした結論は「ノー」である。
 論文のタイトルはずばり「中国軍は戦争の準備ができているのか」。米国などは、中国軍が国家主席習近平の命を受け、創設100周年に当たる2027年までに台湾武力侵攻の準備を整えるのではないかとして警戒を強めている。フラベルは一連の粛清が「中国軍の即応性にどのような影響を与えるか。台湾への大規模な軍事作戦を行う前に、慎重な姿勢を取らざるをえない可能性がある」として、分析を行った。

 

中国軍官が相次ぎ失脚
4人に委ねられる意思決定

 

 中国では2023年秋以降、共産党の最高指導機関である中央軍事委員会のメンバー習を除く軍人6人のうち3人が解任された。まず、23年10月に失脚したのは国防相李尚福だった。「重大な規律・法律違反が確認された」として、元国防相魏鳳和とともに党籍まではく奪される処分を受けた。
 続いて、軍事委員会委員の1人である苗華が解任された。昨年11月、「重大な規律違反」の疑いで調査を受けていることが報じられていた人物だ。苗華の失脚は彼個人だけに止まらない。
 苗華は海軍上将だが、もともとは陸軍出身で海軍に転向した。汚職の取り調べを受けていると言われている国防相の董軍は元海軍司令であり、苗華の推しで国防相になった。苗華は国防相、ロケット軍幹部が相次いで失脚してから、軍の人事を握った。
 国防相の董軍のほか、ロケット軍司令で元海軍中将の王厚彬、海軍司令の胡忠明はいずれも苗華主導の人事とみられている。台湾を管轄する東部戦区司令の林向陽は福建時代の苗華の部下であり、武装警察部隊司令の王春寧も苗華に近い人物だ。つまり、単なる苗華の失脚では済まない事態となっている。
 さらには、軍事委員会副主席である何衛東の動静が途絶えており、英紙フィナンシャル・タイムズや米紙ワシントン・タイムズは汚職の取り調べを受けて失脚したと報じた。
 何衛東と苗華は習近平とゆかりの深い福建省を拠点とする「第31集団軍」で勤務した経験があり、「福建閥」と見られてきた。
 側近たちを相次いで排除した習近平の狙いはどこにあるのか。それまでの軍高官を排除し、側近たちに新たな軍の秩序づくりを任せたはずだったが、その側近たちが、軍の内部で新たな派閥を形成していったため、習近平がそれを警戒して失脚させた。あるいは、軍内部で苗華らの台頭を面白く思わない勢力が習近平に働きかけて失脚させた、などさまざまな推測があるが真相は不明だ。

 

※画像=中国では軍事的な準備より政治を優先して争いが起こっている

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