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熱可塑CFRPの破壊機構に対する積層構成影響明らかに

熱可塑CFRPに特徴的な微細損傷を高精度可視化も
日本の十八番である炭素繊維複合材(CFRP)。現在、787ドリームライナーなどで活用されているのは、高温・高圧で樹脂を固める熱硬化性樹脂を用いたCFRPだ。そうしたなか現在、より効率的かつ熱硬化手法に比べて安価に、そしてリサイクル性能に優れた熱可塑性CFRPが注目され、各所で研究開発が進んでいる。次世代航空機でも熱可塑性CFRPを利用することが視野に入っているが、一方で熱可塑性CFRPは積層構成が破壊機構に与える影響に関する理解が十分に進んでおらず、その適用に向けた課題の一つとなっている。
そうしたなか東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻の龍薗一樹助教らの研究グループが、拡張有限要素法を用いた数値解析と力学試験中の損傷進展観察を組み合わせた計算および計測を融合させることで、熱可塑性CFRPの破壊機構に対する積層構成の影響を初めて明らかにした。さらに、3 GeV高輝度放射光施設「Nano Terasu」での放射光X線マイクロCTを活用し、熱可塑性CFRPに特徴的な破壊過程における微細な損傷を高精度に可視化することにも成功した。
熱可塑性CFRPの破壊機構に関する知見をモデリングすることで、数値シミュレーションのさらなる高精度化が期待されることから、過剰な安全率が設定されている複合材による航空機のさらなる軽量化に繋がる可能性があると指摘。膨大な時間と費用を要する認証試験の一部を数値材料試験で代替し、熱可塑性CFRPを用いた次世代航空機の実現に貢献すると期待されるとの見方を示した。