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レールガン研究、20年度にはフィールド射出も視野
飛翔体速度を加速化、レールの低摩耗化も成功
防衛装備庁の陸上装備研究所が研究を進める電磁加速システム、いわゆるレールガンの研究は、2020年度までの研究期間の中で、2019年度中にフィールドテストを始めたいとし、最終的には実際に飛翔体を打ち出すテストを行う考えであることが分かった。レールガンの研究は、各国で実用化に向けて研究が進められていて、特に米国では、飛翔体が目標物に弾着するテストの様子も公開された。陸上装備研究所でも、同研究において成果が現れてきたことで、2020年度内にも同様の試験を行える見込みだとした。
防衛装備庁は、11月13・14日に都内ホテルで「技術シンポジウム2018」を開催し、取り組んでいる研究成果を公表した。そのうちレールガンの研究は、毎年研究の進展が示されてきたところ。この度の公表では、飛翔体速度の加速や、レールの低エロ―ジョン(摩耗)化などの結果が得られたとした。
陸上装備研究所が保有する研究用レールガンは、電磁加速装置としては、砲身の長さが2メートルで、砲身の内径(レール間の距離)が16ミリ、レール材料は主に銅で、絶縁体の材料がポリカーボネイトのもの。パルス電源のコンデンサバンクエネルギーは1MJで、静電容量が4.8mFとなっている。飛翔体については、電機子の材料がアルミニウムで20グラムの重さ、長さ44ミリ、幅16ミリのもの。研究ではこれまで、磁気センサを使った飛翔体速度の測定で、砲身内部の飛翔体の速度が毎秒2.7キロメートルまで加速させることが可能となったという。
また、レールの低エロージョン化の研究では、従来から銅を基本材料として使用してきたが、銅のレールでは、27発の射撃を行うと、レールに飛翔体のアルミと見られる金属が付着するなど、大きな摩耗が見られた。材料の違いによるレールの変化を計測した結果、タングステン70%、銅30%の合金を使用したレールでは、基本材料の銅と比べて37%の摩耗の低減に成功した。これは銅の約60%まで低減したモリブテンのレールよりもさらに摩耗の低減に成功。同研究がさらに進むかたちとなった。また同研究所では、電機子のみの飛翔体だけでなく、弾心などを取り付けた試作の飛翔体も展示して、フィールドテストを意識していることも示した。
レールガン研究で重要なことは、コンデンサバンクの小型化だという。電気エネルギーを利用して高初速を得るため、現段階では大型のコンデンサバンクが必要。これが将来の技術的課題だとする。原理として、1メガアンペア以上の電流が流れれば、10キロ以上の飛翔体を毎秒2000メートル以上の初速で発射することが可能だとしている。
※写真1=技術シンポジウムで公開されたレールガンのレールと飛翔体
※写真2=右側の飛翔体は弾心などが付いたもの