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2023.08.30

WING

日本空港ビル、急回復する航空需要、訪日6000万人達成重視

 国際線強化施策に注力、サービス向上で世界No.1へ

 日本空港ビルデングの田中一仁副社長はWINGのインタビューに応じ、3年もの間続いたコロナ禍から脱却した今、同社グループでは政府が2030年に目標としている年間訪日外国人6000万人、観光消費額15兆円の達成を強く意識しているとし、首都圏でより多くの訪日外国人旅客を受け入れるために、第1・第2ターミナルで行う各工事を計画通り進めるとともに、自らイノベーションを起こしてサービスの上質化に取り組んでいく姿勢を示した。そして、それがグループ全体で最終的に目指す「“世界で最も評価される空港”へつながることになる」として、ハード・ソフトの両面でサービス向上に取り組むことの重要性を強調した。
 田中副社長は、コロナ禍を経ても政府が2030年の目標として掲げ続けた訪日6000万人の達成は、日本空港ビルグループとして「強く意識しており、今後の少子高齢化の環境を考えれば、訪日旅客による国内消費拡大が重要な課題」だと述べて、羽田空港のターミナル会社としてそれに貢献していくとした。しかし羽田空港では今後、発着枠が大幅に増えていくことは考えにくく、「成田空港とともに首都圏でどれだけ訪日旅客を受け入れられるかが注目される」ため、あらゆる状況にも対応できるように、ハード・ソフトの両面でサービス品質の向上を図っていくとした。そのため今後は「少子高齢化や高速鉄道の整備の進展を鑑みれば、国内線の発着枠を国際線へ振り替える議論も出てくる可能性」も想定して、質の向上を図る上で「国際旅客やさらなる国際化などを意識した施策が重要なポイント」だと説明した。
 ハード面の取り組みについては、第1・第2ターミナルの工事のうち、第2ターミナルでは北側サテライトと本館をつなぐ接続工事を行っている。今年4月から着手しており、2025年の開業を予定している。この工事は、東京オリンピック・パラリンピック開催時まであった貴賓室の移転に伴い、サテライトと本館の接続部分を整備するものであり、バスを利用せず直接サテライトへ移動できるようになる。そのほか、接続部分には3スポットが新設される予定で、ターミナルの容量も増えることになる。
 第1ターミナルでは、ターミナル本館の北側にサテライトを増築する工事を行う。こちらは来年以降に着工し、2025年竣工の予定となっている。サテライトを整備することで、国によるエプロンの大規模改修で一部閉鎖となる既存スポットを補填することになる。また、主に使用するJALが導入を進める新型の大型機A350にも対応できるスポットへ改修し、発着枠が増えなくとも、インバウンドの際内乗継などに伴う国内線の需要にも対応していく。
 ソフト面の取り組みについては、旅客の利便性・快適性・機能性を向上させるサービスを強化していく。特に国際線で導入した顔認証による新しい搭乗手続き「Face Express」など、スマートエアポート(FAST TRAVEL)に資する取り組みは「航空会社と協力しながら進めていく」ことになる。
 さらに、独自の取り組みとして力を入れるのは、羽田空港公式アプリとして配信する「Haneda Airport」だ。個人のニーズに合わせた通知機能などで空港を案内するアプリだが、今後さらに利便性を高めて各種機能を追加していく中で「マーケティングという意味では、重要なツールになる」とした。それは、このアプリの機能に加え、ターミナル内のビーコンなどを活用することで、旅客の滞在時間などのデータを集められるようになるためだ。
 例えば、保安検査通過の前後で空港の滞在時間などをデータとして集められれば、店舗などを含むターミナル運営の施策につなげることができる。各航空会社ではチェックイン機能が簡略化されていることもあり、保安検査通過前のエリアでの滞在時間が以前よりも短くなったと見られる。しかし実際の動向として「保安検査通過後のエリアでの物販・サービス・飲食などに費やす時間が増えているのか、それとも空港の滞在時間自体がより短くなっているのか、旅客動向を研究していく必要がある」として、動向を正確に把握することで、刻々と変化していく旅客のニーズに合わせて利便性の高い施策、サービスを打ち出していけるとした。

※写真1=日本空港ビルデングの田中一仁副社長

※この記事の概要
・多ジャンルの事業者と空港課題解決へ
 HICityで期待するハレーション
3年ぶりに四半期黒字達成
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 中国旅客の回復には対応可能
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 大田区中小工場支える施策貢献
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 人によるサービス強化こそが進化  など