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2022.12.21

WING

原型は「緑の悪魔」、陸自次期装輪装甲車「AMV」が選定された理由

 原型「AMV」はアフガンで実戦、その経験生かし改良開発

   防衛省は2022年12月9日、陸上自衛隊が令和5年(2022)年度から現用の96式装輪装甲車の後継として導入を計画している次期装輪装甲車に、フィンランドの総合防衛企業パトリアが開発した「AMV」を選定したと発表した。
 防衛省のプレスリリースにはAMVと明記されているが、同省に提案されたのはAMVの発展改良型のAMV XPだ。このため本稿ではAMV XPと表記する。
 フィンランドの装輪装甲車は日本では認知度が高いとは言いがたいが、同国の軍用車輌メーカーであるシス・ディフェンスが開発した、「パシ」の愛称で知られる6輪装甲車のXAシリーズは、1984年から2004年にかけて1200輌が製造され、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、エストニア、オランダ、アイルランド、そして国際連合の6ヵ国1機関に採用されており、レバノンをはじめとする世界各地でのPKO活動で大きな成果を挙げている。
 AMV XPを開発したパトリアは1997年にシス・ディフェンスを吸収し、XAシリーズの開発・製造を引き継いだ企業だ。フィンランド政府が株式の50.1%、航空自衛隊にも採用された長射程対艦ミサイルJSM(Joint-Strike-Missile)などの製品で知られる、ノルウェーの大手防衛企業、コングスベルク・ディフェンス&エアロスペースが49.9%をそれぞれ保有している。
 パトリアはAMVシリーズとXAシリーズのほか、120mm自動迫撃砲システムのAMOS(Advanced Mortar System)と、その軽量化型のNEMO(New Mortar)の開発・製造を手がけているほか、NH90ヘリコプターのライセンス生産や航空機およびヘリコプター市場向けの先進複合材料、エンジニアリング製品なども製造しており、フィンランド軍の防衛装備品のライフサイクルコストを低減するための、戦略的パートナー企業と位置づけられている。また2021年12月からは欧州防衛産業開発プログラム(EDIDP)の一環として行なわれる次世代装甲車の技術開発プログラム「FAMOUS」(European Future Highly Mobile Augmented Armoured Systems)の産業コーディネーターとしてプログラムを主導するなど、フィンランドだけではなくヨーロッパ全体においてもその存在感は大きなものとなっている。
(写真・文=竹内修)

※この記事の概要
・「AMV XP」とはどんな車両?
・次期装輪装甲車選定の進め方
・AMVのラ国、ポーランドでは防衛産業維持・成長に貢献! など