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2022.12.19

WING

安保3文書決定、反撃能力明記で歴史的転換

 防衛関係費5年でGDP比2%、高まる脅威に対処

 政府は12月16日、今後の安全保障戦略の方針を示す「国家安全保障戦略」をはじめとした新たな防衛3文書を発表した。日本は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているとして、外交力や防衛力だけでなく、経済力・技術力・情報力といった総合的な国力によって危機を未然に防ぐとし、能動的に平和で安定した国際環境を創出する考えだとした。そのなかでも防衛体制を抜本的に強化するため、反撃能力の保有を文書に明記して抑止力の強化を示した。さらに防衛関係の予算水準を引き上げて、2027(令和9)年度には現在の国内総生産(GDP)比2%の水準に達するようにするとし、新たに作成した「次期防衛力整備計画」では次年度以降5年間の歳出総額を43兆円にすることも明記。防衛体制の歴史的な大転換期となった。
 「国家安全保障戦略」では、常任理事国であるロシアがウクライナを侵略するという国際秩序の根幹を揺るがす事態が発生したことを踏まえ、東アジアでもそうした事態が発生しうる可能性があるとして、防衛力の抜本的な強化が必要だとした。陸・海・空に加え、宇宙・サイバー・電磁波の各領域で総合的な防衛力強化を図るが、その一方で既存の防衛体制では日本周辺で高まり続ける脅威に対応することが困難になったため、相手の火力圏外から攻撃できるスタンド・オフ防衛能力などを活用した反撃能力の保有を明記した。これは相手国からミサイル攻撃を受けた場合、ミサイル防衛によって飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からのさらなる攻撃を防ぐために日本から有効な反撃を加えるという能力だ。
 この反撃能力については、特に北朝鮮の核・ミサイル開発による脅威に対応するためにも必要性に迫られるようになった。近年では、極超音速ミサイルや変則軌道を伴うミサイルによる技術が格段に向上したほか、高高度に打ち上げるロフテッド軌道や複数のミサイルを同時に発射する飽和攻撃といった迎撃しにくい運用能力の向上が著しい。もちろん、中国およびロシアの巡航ミサイルを含む各種ミサイルも同様に重大な脅威だ。そのため、従来の弾道ミサイル防衛(BMD)という防衛手段だけでは完全に防ぐことが難しくなりつつあるため、反撃能力の保有が必要になったとする。

※この記事の概要
 関係省庁とも総合的に防衛力強化
 10年後にはより早期・遠方で対処
 積極的平和主義で国際協調
 日本が国際関係の新たな均衡へ   など

※関連記事はこちら
(1)大綱から国家防衛戦略へ、目標や手段など明記
http://www.jwing.net/news/60054

(2)次期防衛力整備、5ヵ年で大幅増の43兆円
http://www.jwing.net/news/60049