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2022.12.07

WING

第165回「日本が危ない」日本が目指すべきは「普通の国」

防衛のあり方は米国次第
核の議論をタブー視するな

 

 旧ソ連の崩壊を予測したフランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッドがこのほど来日し、日本に「普通の国」になることを勧めた。トッドの言う「普通の国」とは、米国を唯一の同盟国としてみるのではなく、日本自身が自ら防衛力をつけるという意味だ。トッドはその究極の形として核保有の必要性を強調したが、日本の現実は――。
 11月3日、ジャーナリストの櫻井よしこが理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」が主催したシンポジウムで、トッドは日本に対し「感情に流されるべきではない。米国の弱さ、不安定さを認識すべきだ」と強調した。その上で、「核兵器は安全を保障する。核武装することによって平和を確立する必要性があるとの確信を深めた」と力説した。
 トッドの言うようにウクライナが核を放棄せずに保有していたならば、ロシアは侵略に踏み切らなかっただろう。ロシアによるウクライナ侵略を受けて、日本でも核に関する議論が起きた。本紙でも第150回で「今こそ核の保有を議論せよ」(4月6日付)と提唱した。
 議論の旗振り役となったのは元首相、安倍晋三だった。安倍はロシアによるウクライナ侵略が始まって3日後の2月27日朝、フジテレビ番組「日曜報道ザ・プライム」に出演し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採用している「核共有(核シェアリング)」について日本でも議論すべきだという考えを示した。
 「核共有」とは、米国の核兵器を非核国が自国の領土内に配備すること。安倍はドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアを例に挙げて「世界はどのように安全が守られているかという現実の議論をタブー視してはならない。日本の国民の命、国をどうすれば守れるか、様々な選択肢を視野に入れて議論すべきだ」と訴えた。

 

一石投じた核の共有
核の傘は万全なのか

 

 安倍と親しかった産経新聞論説委員の阿比留瑠比は月刊「正論」12月号に、発言の真意を安倍から聞いた時の模様を明かしている。阿比留によると、安倍は「核共有をやろうというよりも考えろということ。核共有に替わるものが何かあるのかも考えなければならない。ドイツとかベルギーとかきれいごとを言っているが、米国と核をシェアしているんだから。これもあまり知られていないでしょ」と述べ、世論に議論を喚起するのが目的だったと説明した。

 

NPT 会議で日本の首相として一般討論演説を行った(提供 : 首相官邸)

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