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2022.07.26

WING

ICAO、環境長期目標の正式合意向け大きく前進  

ハイレベル会合、パリ協定気温目標支持、50年実質排出ゼロへ

 国際民間航空機関(ICAO)はこのほど、「国際航空CO2排出削減のための長期的野心的な目標の実現可能性に関するハイレベル会合」を開催した。この環境ハイレベル会合に参加した各国の閣僚や当局関係者は、パリ協定の気温目標を支持。その上でICAOは2050年までに炭素排出量を実質ゼロにするという世界的な長期目標(LTAG)について、更なる協力の深堀りを図るよう各国に促した。 

 これにより、今年9月末~10月上旬にかけて開催される第41回ICAO総会において、LTAGが最終合意することに大きく前進したかたちだ。  
 ハイレベル会合は去る7月19日22日までの4日間の日程で、カナダモントリオールのICAO本部で119カ国の代表が討議したもの。ハイブリッド会議には、各国および国際機関から700人以上が参加した。 この会議の成果は8月のICAO理事会で審議され、9月の第41回ICAO総会でシカゴ国際民間航空条約の全締約国(193カ国)に報告される予定だという。
 ICAOのフアン・カルロス・サラザール事務局長は、4日間に亘る議論の締めくくりとして、「パンデミックの影響からの回復と気候変動との闘いは、各国が互いに手を取り合って進めるべきもの」と強調。グローバル産業である航空分野は、持続可能な脱炭素社会の実現に向け、「より良いものを作るためのリーダーシップを発揮する絶好の機会である」と述べた。  
 ハイレベル会合では、技術革新や、新たなタイプの航空機の開発や運航方式、持続可能な航空燃料(SAF)の世界的な生産能力の向上に基づき、航空セクターのCO2排出量削減に関する様々なシナリオやオプションについて検討した。
  サラザール事務局長は、「建設的かつ協力的な議論を通じて、世界規模の長期目標に向けた最終合意と総会の成功に近づくため、合意形成に向けた同じ精神を継続しよう」と各国関係者に呼びかけた。
 さらにICAO理事会のサルバトーレ・シャキターノ理事長は、「今日の決定は民間航空の脱炭素化を通じて気候変動との戦いに貢献するというICAOのコミットメントに関する基本的なメッセージを発信するもの」との認識を示した。

 IATA、「正しい方向への一歩」  
 ハイレベル会合の勢い持続を    

 ICAOのハイレベル会合の結果を受け、国際航空運送協会(IATA)はパリ協定の気温目標に沿って、2050年までに航空部門の炭素排出量を正味ゼロにするという長期目標(LTAG)に向けた各国の進捗を歓迎する声明を発表した。
  IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長はこの声明のなかで、「ICAOハイレベル会合が、2050年までの航空部門の実質排出ゼロの公約に沿ったLTAGを支持したことは、正しい方向への一歩だ」とコメント。「第41回ICAO総会での正式な合意は、航空の脱炭素化に向けた各国の共通アプローチを支えることになる」とし、「航空業界にとって非常に重要なことであって、政府の政策が世界的に同じ目標とタイムラインを支持することで、航空業界、特にそのサプライヤーは脱炭素化のために必要な投資を行うことができる」との認識を示した。
  IATA加盟航空会社は昨年10月、2050年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを達成することを公約。この目標を達成するためには、持続可能な航空燃料(SAF)、新たな推進技術、インフラと運用の効率化、そしてあらゆるギャップを埋めるためのカーボンオフセット、炭素回収技術など、様々な技術を組み合わせていく必要があるとした。
 ウォルシュ事務局長は「2050年までに実質排出ゼロを達成するためには、新たな燃料、技術、運用方式に世界レベルで移行することが必要だ」と強調し、「だからこそ、数週間後に開催される第41回ICAO総会での正式な合意に向けて、各国がハイレベル会合の勢いを持続させることが非常に重要だ」と話し、今回のハイレベル会合を機に、ICAO総会でLTAGに最終合意することの重要性を訴えた。

※写真=ハイレベル会合でLTAGを討議。総会での最終合意に向けて前進した(提供:ICAO)