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2022.05.02

WING

「第150回 日本が危ない」今こそ核の保有を議論せよ

映画の一幕が現実のものに
危機感高まる核の脅威

 

 スタンレー・キューブリック監督の傑作、映画『ストレンジラブ博士』(1963年)は、偶発的な核戦争を主題にしたブラック・コメディだ。妄想に取りつかれた空軍基地司令官の命令によってB-52爆撃機部隊がソ連への核攻撃に発進してしまう。1962年のキューバ危機を題材にしているが、あれから60年経ちソ連は崩壊し、核戦争は遠のいたかにみえた。だが、我々はこのコメディが現実になるかもしれないという恐怖に直面している。ロシアによる「核の威嚇」である。
 映画の空軍基地司令官のモデルとなったのは、核戦争を覚悟してでもキューバ空爆を行うべきだと主張した米空軍参謀総長カーチス・ルメイだ。旧ソ連がキューバにミサイルを搬入しようとして米ソが対立し、世界を核戦争の恐怖に陥れた。時の米大統領ジョン・F・ケネディは完全に破壊できない可能性があるとして、ルメイの提案を却下した。
 核兵器は長崎に投下されて以降、使用されていないが、ロシア大統領ウラジミール・プーチンはウクライナ侵略に際し、核抑止部隊に対し特別態勢を取るよう指示した。ロシアは国連安全保障理事会常任理事国の一員であり、核不拡散条約(NPT)で核保有を認められるなど核の特権を享受してきた。
 欧州ではロシアによる脅威に対する危機感が急速に高まった。中でもドイツは政策を180度変え、国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上へと大幅に引き上げる方針を表明した。先の大戦の同じ敗戦国であるドイツの大きな決断である。では、日本はどうだろうか。外交評論家、田久保忠衛が講演で「ドイツは覚醒したが、日本は眠ったまま」と評したように、切迫感は一向に伝わってこない。

 

核共有議論もすべてタブー
実益なしとする三原則見直し

 

 それを象徴したのが3月16日の安全保障調査会だ。会長は元防衛相小野寺五典で、防衛相経験者らがメンバーとして名を連ねる。「勉強会」と称して、「拡大抑止」をテーマに核共有について非公開で議論した。出席した衆院議員、柿沢未途は自身のツイッターに(小野寺も)お話ししていましたが、このテーマを正面から掲げて議論するのは自民党でも初めてではないか、と。それだけ表立った議論がタブー視されていたテーマです」と書き込んだ。

 

(図:防衛白書抜粋)

 

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