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2021.07.13

WING

世界の提供座席数、週8000万席の大台に一歩届かず

今週は7980万席、先週比1.5%増と回復傾向続く

 

 
 世界の定期便で提供される国際線・国内線合計の座席数が一週間あたり8000万席の大台まで回復することが期待された今週だが、その願いは惜しくも実らなかった。英国でフライトステータスなどデータサービスを提供するOAGによれば、今週提供される予定の座席数は7980万席となる見通しにあることが分かった。先週と比べて1.5%増と、わずかながら増加する見通しだ。ワクチン接種によって回復傾向が顕著な一方、その回復には地域によって大きな温度差がみられている。新型コロナ感染拡大が著しく、医療体制が崩壊危機に直面している地域を中心に依然として座席供給量の大幅な削減がみられているという。
 OAGのジョン・グラント氏によれば、今週は「昨年3月16日以降、最も多くの座席が提供される週」になるとのこと。ポジティブな傾向が市場にみられるとし、「多くの国がロックダウンを解除したため、国際線の座席供給量は過去10週間で80%以上増加した」ことを明らかにするなど、国際線市場でも供給量の回復傾向が続いていることに触れた。
 その上で、「今後数週間のうちに複数の主要市場で規制が緩和されることから、7月最終週までに国際線のキャパシティは週2400万席となり、現状と比較して400万席増加する」見通しにあると分析。国内線のみならず国際線でも回復の動きがさらに加速するだろうと予測した。
 全体的に座席供給量も回復傾向にあるものの、一方で「注意しなければならないことは、航空会社が継続的なロックダウンに合わせて座席供給量を削減し続けていること」とコメント。「航空会社は7月には約400万席を、8月には800万席以上を既に削減している」として、今後の状況次第では更に削減される可能性があることを示唆。デルタ株など、感染拡大が続いていることに警戒感を示した。
 さらに西ヨーロッパと米国の間で計画されている提供座席数は、8月中旬には現状に25万席追加して96万5000席にまで拡大する予定にあるものの、「米当局が海外パスポート保持者の入国を許可しない限り、25万席の追加は必要ないだろう」との見方を示すなど、米国の対応次第で大幅に削減される可能性があることに含みを持たせた。

 

 東南アジア26%減など激しい回復温度差
 中国は増加傾向も機体稼働率低い

 

 また、グラント氏によれば東南アジア地域では26%減、南アフリカ地域でも14%減、南西太平洋では11%減となるなど、依然として座席供給量減少の嵐が吹き荒れているとのこと。その一方で北東アジア地域で約93万席が追加され、この地域では国内線市場の規模が大きいことから、世界のキャパシティの4分の1以上を占めるまでになったという。
 現在、北東アジア地域で提供されている座席の実に97%が国内線向けとのことで、「昨年1月には640万席の国際線シートが提供されるのに対し、今週は71万6000席しか提供されていない」と分析し、「この地域は比較的好調だが、国際線キャパシティの回復にはまだ時間を要する」との見方を示した。
 北東アジア地域が国内線市場頼みとなっている一方、ワクチン接種が進む西欧諸国は国際線市場が中心だ。西欧諸国地域における国際線提供座席数は約1020万席に達するとのことで、同地域における座席数の実に3分の2が国際線向けとのことだ。ただ、これらの国際線座席は夏の旅行シーズンに同地域の海辺のリゾート需要が急増しているためで、国際線座席数のうち70%は西欧地域内で運航される予定にあるという。
 また、中国市場では定期便の座席数が引き続き増加傾向にあり、6月以降、既に300万席が追加されたという。ただ、中国の主要航空会社における機体平均稼働率は依然として低い様相で、その結果、必要に応じて提供座席数を柔軟に変化させているという。

 

※写真=1週間あたりの定期便の航空座席数は8000万席に惜しくも届かず。回復傾向は鮮明だが地域によって回復温度差が大きい

 

※グラフ=座席供給量の推移(提供:OAG)