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2018.07.30

WING

国内初組み上げのPW1200G、出荷向け着実に進捗

三菱重工航空エンジン、初号エンジンの健全性確認へ
 
 三菱重工航空エンジンの島内克幸社長が本紙のインタビュー(6月末取材)に応じて、MRJ搭載用エンジンであるPW1200Gエンジンについて、三菱重工航空エンジンが最終組み立てを担当している最初のエンジンの初回組み上げを今年3月末に実施、出荷に向け着実に進捗していることを明らかにした。民間旅客機に搭載するエンジンの最終組立作業を行っているのは、日本国内で三菱重工航空エンジンが初めてのこと。島内社長は「長い間かけて取り組みを進めてきて、大きなトラブルもなく、順調に作業が進捗している」と評価した。
 三菱重工航空エンジンが初めて最終組立を担っている初号エンジンは飛行試験に活用される予定。名古屋誘導推進システム製作所から、MRJの最終組立工場のある小牧南工場もしくは飛行試験拠点である米・モーゼスレークへと出荷されることになる。
 なお、三菱重工航空エンジンが最終組立を担っているエンジンとしては初めてのことになるが、部品レベルの出荷では燃焼器モジュール10台と低圧タービンモジュール3台をそれぞれ出荷済みだ。

 

 エンジンは一度分解して、今後内部の健全確認
 再度組み上げていよいよ運転試験・出荷へ

 

 島内社長によれば、「最初の組立エンジンであることから、プラット&ホイットニー社の指導を受けながら互いに確認しながら進めてきた」と振り返った一方、「エンジン試験は未実施。今後エンジンの試験を実施し、内部の健全性を確認するための分解作業を行うことになる」ことを明らかにした。一度分解作業を行ってから、「再度、組立作業を実施して、エンジン試験を実施して出荷することになる」としており、日本で初めて組み上げられた民間旅客機用エンジン完成に至るまでには、いくつかのステップが残されているようだ。
 最終組立作業について島内社長は「物理的に組み上げるなどのところは、これまでもMROなどにおいて携わってきていたことから、それほど大きな課題はなかった」とコメント。「ただ様々なシステムをプラット&ホイットニーとリアルタイム同期することが必要で、システム関係の整備にはそれなりに力を入れて取り組んできた」とも振り返った。
 今後、エンジン試験を実施するには、組み上げたエンジンを試験するテストセルの認証を取得しなければならない。セルがきちんとエンジン性能を計測することができるかどうかを評価するためには、シェイクダウン試験、セル・キャリブレーション試験という二つのセル関連試験をくぐり抜けなければならない。
 島内社長によれば、「2016年12月には、プラット&ホイットニーからシェイクダウン試験用のエンジンが送られてきた。シェイクダウンはセルの性能面というよりは、テストセルが健全に運転試験ができるかどうかという試験のこと」だという。このシェイクダウンはその年の12月中に完了したとのことだ。
 次のステップとしてセル・キャリブレーション試験を実施することになるが、「プラット&ホイットニーで組み上げたセル・キャリブレーション用エンジンを受領し、4月以降にエンジンを運転し、6月までに必要な試験データを取得した。そのデータをプラット&ホイットニーに送って評価を受けている。我々のセルがエンジン性能をきちんと計測できることを確認した後で、3月に我々が組み上げたエンジンの試験を実施することになる」ことを明かした。