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2020.06.16

WING

防衛省、イージス・アショア配備プロセス停止

ブースター落下に問題、改修にコスト・時間必要

 防衛省は6月15日、秋田県・新屋演習場と山口県むつみ演習場へ配備を計画してきた、イージス・アショアの配備プロセスを停止すると発表した。かねてより地元の強い反発を受けて、配備計画は難航していたが、このほどソフトウェアとハードウェアで技術的な問題が判明したということで、計画停止の判断に至った。今後、両地元に対してお詫びと説明を行った上で、国家安全保障会議へ状況を報告。その議論を踏まえて検討したいとの考えを示した。
 この配備プロセス停止は、地元の反対が理由ではなく、技術的な問題による判断。防衛省では、迎撃ミサイルの発射時に落下するブースターについて、従前からむつみ演習場では演習場内へ、新屋演習場の場合は海へ落下すると説明してきた。しかし5月下旬の米側との協議によって、必ずしも予定どおり落下するとは限らないことが分かった。説明どおりに落下させるためには、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアを含むシステム全体の大幅な改修が必要で、配備するには相当のコストと期間を要するため、配備プロセスを停止することにした。
 河野太郎防衛大臣は、この日の臨時会見で「コスト、期間を考えると合理的ではない」と停止の理由を述べた。特にむつみ演習場での運用について、ブースターを必ず演習場内へ落下させることができないと分かり、秋田側でも同様に停止することが必要だと説明した。
 防衛省ではそれまで、イージス・アショアの2023年度運用開始を計画。迎撃ミサイルは、日米で共同開発したSM-3ブロックIIAを使用する計画だった。そもそもイージス・アショアを導入する理由は、弾道ミサイル防衛(BMD)の強化とイージス艦の負担軽減など。弾道ミサイルを発射する北朝鮮の技術は日進月歩で進んでいる状況で、BMDとしては一刻も早いイージス・アショア配備を期待していた。しかし、ハードウェアの改修によってかなりの期間を要することになれば、早期配備が実現しないことになる。
 また、コストについても追加費用が膨大になる。イージス・アショア配備のため、すでに2019年度予算で1757億円を計上した。これに後日装備として巡航ミサイル対処能力などを付与していく予定だった。改修すれば、より大きな予算が必要になってしまう。そのため河野大臣は、当面イージス艦によるBMDを継続する考えを示した。従来どおり、イージス艦とPAC-3による体制を続けることになる。
 しかしこの度の判断は、・・・・・。

 地元は配備に反発、信頼失った防衛省

 
※写真=イージス・アショア配備のプロセスが停止となった。必ずしもブースターを安全な場所へ落下させることができず、改修には相当のコスト・時間がかかるため「合理性に欠ける」と判断した(提供:ロッキード・マーティン)