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2018.06.21

WING

F-2後継機、日本主導の国内開発を決議

自民党国防議員連盟が安倍総理に手渡す

 自由民主党国防議員連盟の衛藤征士郎会長は6月20日、安倍晋三総理大臣に、F-2戦闘機後継機の日本主導による国内開発による取得を求める決議書を手渡した。同議連では、(1)次期中期防衛力整備計画にF-2後継機の国内開発着手を明記すること、(2)F-2後継機の取得方法は、日本主導の国内開発とすることの2点を政治が責任をもって決断されることを求めると結論している。国内開発を求める理由として、技術の伝承、十分な技術水準、適格な改修・能力向上、コストの抑制の4点を挙げている。

 

 周辺諸国の航空機の質・量が拡大
 航空優勢堅持にF-2後継機重要課題

 

 F-2後継戦闘機の必要性については、「近隣には航空機の質・量との増大し、本邦に取って将来さらに大きな脅威となりうる国が存在しており、日本の独立を保つためには航空優勢の堅持は極めて重要」との認識から、その一翼を担って来たF-2戦闘機が2038年代中頃に退役が始まると見込まれるなか、F-2後継機の取得は大きな課題となってきていると述べている。
 防衛省が平成26(2014)年6月に定めた「防衛生産・技術基盤戦略」では防衛装備品の取得方法は、国内開発、国際共同開発・生産、ライセンス生産、民生品等の活用、輸入の5類型が挙げられている。自民党国防議員連盟ではF-2後継機の取得は国内開発の選択を求めている。
次に各理由毎の根拠や必要性を紹介する。

 

 コスト抑制はトータルライフサイクルで判断
 国産は派生型の開発可能性など全体コスト視点も

 

 このうち「コストの抑制」については、ライフサイクルコストの観点から国内開発は開発費が高いとの批判がある一方、FMSなど輸入取得は価格が当初より吊り上げられるリスク、運用・維持面でも海外調達が国内調達より高額となる例もあるなど、決して海外取得が安価とは言えないと述べている。そして、積極的な意見として、国内開発を行うことで、将来の状況変化に応じた能力向上やミサイルとの連接、練習機・海外移転モデル・無人機化など派生型のファミリー化が可能となり、全体としてコストを低減できるとしている。更に、日本の産業力を総動員し民生分野のノウハウを活用することで効率的・効果的な調達も期待できるとしている。これらをまとめて国内開発は将来のコスト抑制にもつながるものと考えられる、と述べている。

 

 戦闘機技術伝承は風前の灯
 日本は戦闘機開発から脱落

 

 「技術の伝承」はかねてから、産業界からも求められていたことではあるが、非常に強い言葉で日本が戦闘機開発能力を保持し続けることを訴えている。以下決議文の本文を引用する。「日本は終戦直後から7年間、航空機に関する活動を禁止された。その解除以来、営々として技術を積み重ね、F-1、F-2と戦闘機を開発してきたが、F-2開発開始から30年、生産終了から7年が経過し、戦闘機技術の伝承は風前の灯となっている。次期中期防衛力整備計画での開発がなければ、戦闘機の開発競争から脱落することになりかねず、技術を伝承するためにもF-2後継機は国内開発が必須である」。

 

 戦闘機技術開発の成果を評価
 高出力レーダーなど実例提示

 

 「十分な技術水準」としては、これまでに防衛省と国内航空防衛産業界が続けて来た研究試作の実例を列挙している。これについては、飛行実証まで行われていないものもあり、「十分」かどうかは評価が分かれるところではあるが、国内開発を選択肢のひとつとして提示できるような「戦略的検討」のため行われている研究試作であり、それを活かすべきだと述べている。技術水準についての本文は次の通り。
 「これまで日本が開発してきた次世代戦闘機に必要とされるネットワーク戦闘技術、ボルトレス(防衛省ではファスナーレスと標記)による軽量化は世界初のであり、高出力レーダーは世界最高出力である。エンジンについても、高温・軽量化技術として日本が独自に開発した単結晶素材やセラミックス基複合材、生産手段としての大型鍛造プレスの導入等により、世界最高水準に達しつつある。このように、日本は次世代戦闘機に必要とされる十分な技術水準を既に有しており、それらを活かして質による航空優勢を保つためにも、国内開発を推進しなくてはならない」。

 

 輸入等は改修・能力向上に支障
 F-2では適切の改修・能力向上が実現

 

 「適格な改修・能力向上」では、過去の経験としてまずF-2の開発に触れ、エンジンはライセンス生産での日米共同開発であったが、日本側が機体設計に大きく関与したため、その後の改修や能力向上に迅速かつ適格に対応でき、F-2は現在では「大変性能の高い戦闘機」と認められるに至ったと述べている。F-2が今も改良を続け、能力の拡大が図られていることは指摘の通りである。それの反してFMSはもちろん、国際共同開発、ライセンス生産でも日本側の「設計範囲」が狭い場合には最先端技術が非開示となることが多く、改修・能力向上に支障をきたすことが考えられる、と述べている。決議文では具体的な機種名を避けているが、過去の経験を踏まえた言い方だ。そして、問題に即応し解決から得られた知見を技術力の向上に結びつけるため、将来の安全保障環境や戦略・戦術の変化、技術の進歩などによって求められる改修・能力向上に迅速かつ適格に対応するためには、日本主導の開発でなくてはならない、と述べている。
 また、この項では最後にF-2後継機は、将来の脅威に対抗できる性能や米軍との相互運用性が確実に保持されるとともに、IAMD(統合防空。ミサイル防衛)体制の構築に資するものとしなければならないと考えるとしている。

 

※写真=改修、能力向上が続くF-2戦闘機。後継機も開発が必要との自民党議員連盟の主張だ(提供:航空自衛隊)