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2018.06.06

WING

欧米当局とMIP締結向け日本側規則と調和へ

 BASA拡大協議の一環、20年1月の適用目指す

 

 航空局では、米連邦航空局(FAA)及び欧州航空安全庁(EASA)と、航空安全に関する相互承認協定(BASA)の締結または範囲拡大に向け協議を進めている。その一環で、航空機及び装備品の整備事業に関する認定制度を相互に活用することにより、当該認定に係る検査及び監査等において事業者の負担軽減を図ることを目的とする「整備分野における実施取り決め」(MIP:Maintenance Implementation Procedures)の締結を目指しており、MIPの締結のためには、事業場認定に関する日本の規則と欧米の規則の調和を図る方針を固めた。
 なお、航空局では関連するサーキュラーを改正することにしており、今年7月1日に改正サーキュラーを発行して、2020年1月1日からの適用を目指す。

 

 事業場認定一般方針で人員教育・訓練充実

 

 具体的には訓練プログラムに関する規則の充実を図ることとしており、米連邦航空規則(FAR)では、整備改造認定事業場は、FAAから認定を受けた訓練プログラムを有すること等が定められており、訓練プログラムの詳細について規定されている。
 一方、日本の認定事業場制度では、訓練プログラムは航空局の承認を受けることとはなっていないことのほか、「事業場認定に関する一般方針」における「人員の教育及び訓練」の項の規定は、FAAの規定と比較して十分ではないという。
 そこで訓練に関する業務規程の記載事項を充実することで、FAAの規定との調和を図ることとにした。ただ、各認定事業場において現在社内規程として定められている訓練カリキュラム(訓練項目や訓練時間等の訓練の詳細を定めたもの)の取り扱いは従来と変わりはないとのこと。つまり、訓練カリキュラム自体を新たに航空局の承認対象とすることはないとしている。

 

 領収検査委員にSUP訓練を義務付け

 

 さらに、領収検査員に対するSUP訓練を義務付ける。米国では、FAAの認定を受けたリペア・ステーションは、領収検査員に対して不正品の疑いのある装備品等(Suspected Unapproved Parts:SUP)を発見・隔離し、FAAに報告するための訓練(SUP訓練)を実施すべきことが規定されている。
 一方、日本では「不正品の疑いがある装備品等の報告について」により、認定事業場等に対して、不正品の使用を未然に防ぐための予防措置(装備品等に添付される品質証明書の記載情報の十分な確認、装備品等の購入先の慎重な選定)、SUPを発見した場合のSUPの隔離及び航空局への報告を求めている。さらに、領収検査員は領収検査の基準及び方法に基づいて検査を行う能力を有することのほか、認定事業場が(領収検査員を含む)人員に対して行う教育訓練の内容は教育訓練の対象者に応じたものであることを求めているものの、領収検査員に対するSUP訓練については、明確に規定されていなかった。
 なお改正概要は以下のとおり。

 

■訓練プログラムに関する規則の充実
(1)教育訓練の種類として、初期訓練、定期訓練に加え、特別訓練(特別な知識・技能が必要とされる業務を行うものに対する訓練)や追加訓練を含むべきこと
(2)訓練カリキュラムは、職務ごとに必要とされる知識・技能と教育訓練対象者の知識・技能との差分を分析した上で策定すべきこと。また、その策定手順を定めるべきこと(Repair Station Needs Assessment)
(3)人員の採用又は異動を行った場合は、採用者又は異動者の知識・技能を評価し、必要な教育訓練を特定すること(Individual Needs Assessment)
(4)訓練カリキュラムは、訓練項目ごとに、概要、実施方法、訓練時間及び委託する場合はその委託先を記載すること
(5)教育訓練対象者が満たすべき要件がある場合は、当該要件を明確にすること
(6)航空運送事業者の航空機に係る認定業務を行う者は、当該航空運送事業者が定める要件に従った訓練を受けることとなっていること(航空機整備改造認定・整備検査認定に限る)
(7)訓練カリキュラムが適切かつ効果的なものであるか、継続的に評価を行い、必要に応じ、カリキュラムを見直すこと。また、訓練カリキュラムの評価方法を記載すること
(8)教育訓練の記録については、個人ごとに、少なくとも、氏名、役職、資格、訓練要件及び訓練履歴が記載され、技能証明書の写し(技能証明を有する場合に限る)及び訓練の修了証明書がある場合は、当該証明書またはその写しが添付されること

 

■領収検査員に対するSUP訓練の義務づけ
(9)領収検査員に対して、不正品の識別方法及び不正品と疑われる装備品等を発見した場合の航空局への報告の方法等に関する訓練を実施すること
(10)不正品の混入を防ぐため、部品・装備品の購入先の選定等に際しては、サーキュラーNo.6-014に従い、慎重に選定すること。また、部品・装備品の購入先の選定方法を業務規程に記載すること
(11)領収検査では、装備品に添付される証明等(装備品基準適合証等)に記載されるワークオーダー、作業ステータス、作業基準、使用時間限界、使用時間等の情報を十分に確認すること(サーキュラーNo.6-014の規定と同じ)
(12)不正品の疑いがある装備品等が発見された場合は、サーキュラーNo.6-014に従い、航空局に報告を行うこと。また、この場合の航空局への報告方法を業務規程に記載すること。
併せて、サーキュラーNo.2-006「業務規程作成ガイダンス(小型事業機に係る整備改造認定、整備検査認定関連)」もアップデートします。さらに、サーキュラーNo.6-014についても所要の改正を行う