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2019.11.18

WING

陸自AH-64D飛行再開、残された課題とは

飛行再開までの経緯を陸幕航空機課に改めて聞く

 陸上自衛隊の装備する戦闘ヘリコプターAH-64Dが11月18日以降、陸自航空学校(明野)所属機から順次飛行再開することとなってから2週間が経過した。既報の通り、陸自AH-64Dは2018年2月5日に発生した陸上自衛隊第3対戦車ヘリコプター隊(目達原)の戦闘ヘリコプターAH-64Dの墜落事故を受けて、飛行を停止。陸上幕僚監部は2019年9月27日に、事故原因をメイン・ローター・ヘッドとメイン・ローター・ブレードを繋ぐアウトボード・ボルトに亀裂が生じ破断したためとして、破断に至るメカニズムを2種提示し、再発防止策の徹底と飛行要員の教育、関係部隊の所在する地元自治体への説明を行ってきたところ。
 今回、WINGでは事故原因の究明から飛行再開に至った経緯と今後の再発防止策についてより詳しく話を聞いた。

 

米陸軍、ボーイング、SUBARUの協力得て
9回の事故調査委員会により事故原因特定

 

 事故後の調査は既に報じている通り、部外有識者等を含む陸上自衛隊航空事故調査委員会を主体として、隊員からの聞き取り、MDRの解析、機体の調査等を実施している。陸幕航空機科は、事故原因は事後直後から「操縦士の操縦及び整備員の整備には起因せず、ボルトの破断によるもの」と判断して調査を進めたと明かし、「第三者機関や部外有識者の意見を踏まえつつ調査を実施し、9回の事故調査委員会によって事故原因の特定に至った」と説明した。
 この事故原因としたアウトボード・ボルト破断のメカニズムについては、ボルトが破断したメカニズムとしては特定が出来なかったために、
1.メイン・ローター・ヘッドの保管中に塗られていた腐食防止剤が劣化し構成品同士が固着した結果、アウトボード・ボルトに摩擦が発生して破断した可能性
2.メイン・ローター・ヘッドを事故機に搭載する前に、何らかの理由からアウトボード・ボルトに亀裂が発生して、破断に至った
とする可能性の2種を提示している。このアウトボード・ボルト破断のメカニズムを2通り示すことになった理由を問うと、「成分分析等の各種調査の結果に基づき、一つ目の腐食防止剤の劣化によるボルト破断のメカニズムを推定。その後、米陸軍、ボーイング、特別評価委員の意見を踏まえ、二つ目のメカニズムを推定(した)」と説明。また、製造元であるSUBARUにはライセンス国産の企業として事故調査委員会の調査への協力を得たほか、製造元であるボーイングには必要な調査を依頼するとともに、意見聴取等を実施したことを明かしている。
 なお、二つ目のメカニズムについては、これまでメイン・ローター・ヘッドの搭載前に非破壊検査は行っていなかったことから、その可能性を排除しきれないため、要因の一つとして推定したとのことで、「いずれのメカニズムについても、論理的には排除できないことから、二通りの要因が考えられるとの結論に至った」と語る。また、米陸軍以外のAH-64系列を運用する各国軍等には意見聴取等を実施しなかったのか聞くと、「全てのAH-64の運用に係る情報は、米陸軍に集約していることから実施していない」との回答を得た。

 

非破壊検査を部隊実施、他機種に拡げる可能性も
保管コンテナや部品の調達ペースは「調査中」

 

※写真=AH-64Dが明野所属機から飛行再開する。目達原所属機の飛行再開は未だ不明だ(提供:陸上自衛隊)