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2018.05.25

WING

東農工大・京大ら、芳香族ポリイミド原料の合成反応機構解明

芳香族ポリイミド原料の安価な製造が可能に

 東京農工大学大学院などの研究グループが、芳香族ポリイミド原料の合成反応機構を、シンクロトロン放射光などを用いて解明することに成功した。芳香族ポリイミド原料の合成反応機構は、工業生産もされていながら、これまでその反応機構がほとんど未解明だった。研究チームによると、触媒反応の機構が解明されたことにより、より活性の高い触媒開発の指針が得られ、電子材料用絶縁体や宇宙航空用材料にも用いられている芳香族ポリイミドの原料を収率良く合成することで、より安価に製造することが可能となると期待されるという。
 芳香族ポリイミドは、高分子の中で最高レベルの耐熱性、耐薬品性と機械的強度を持ち、電子部品の絶縁材料や宇宙航空用材料として使用されている。なかでもポリフタルイミドは広く用いられており、その原料の合成にはフタル酸ジメチルの脱水素アレーンカップリング反応と呼ばれる触媒反応が工業的にも用いられている。
 この触媒反応では、酢酸パラジウムと酢酸銅を触媒とし、酸素が酸化剤として用いられるが、その反応機構はこれまで未解明な部分が多く、収率は10%程度に留まっていた。触媒活性の向上のためにも詳細な反応機構の解明が求められていたが、反応に高温を要すること、希薄な触媒濃度でないと反応が進行しにくいこと、パラジウムと銅の錯体が混在した複雑な触媒系であるなどのために、これまで実験的な証拠が限られていた。