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小野寺防衛相、中国空軍爆撃機の発着訓練に懸念
安全確保へ能力構築支援、共同訓練など強化
小野寺五典防衛大臣は5月22日の閣議後会見で、中国空軍の複数の爆撃機が南シナ海の飛行場で発着訓練を実施したことに言及。事実なら初めての訓練だとして、中国軍による同地域での行動拡大に懸念を示した。さらに、同海域でのシーレーンの安全確保が重要な関心事項だとして、改めて防衛省として、国際社会との連携強化のため、地域の能力構築支援や共同訓練などに取組む考えを示した。
今月18日に中国国防省は、中国空軍の複数の爆撃機が南シナ海飛行場で離着陸訓練を実施したと発表した。また報道では、訓練を実施した場所が西沙諸島のウッディー島だとしている。
小野寺大臣は、それらの情報が事実であれば「南シナ海飛行場での中国軍爆撃機による離着陸訓練としては初確認と指摘されている」と説明。その上で、中国が同地域でこれまでに大規模かつ急速な埋立活動を強行してきたとし、埋め立てた土地に「防衛的な性質の軍事施設」と称した砲台など軍事的施設や、軍事目的にも利用し得る滑走路など各種インフラ整備を推進してきたことを話した。
また小野寺大臣は、2013(平成25)年11月以降、同海域では中国の空母「遼寧」が複数回進出していると見られるとし、2016(平成28)年7月以降には中国国防部が中国空軍爆撃機などの「戦闘パトロール飛行」を常態化することを発表したことに触れた。「南シナ海における中国軍の活動も拡大していると見られている」とし、中国の一連の行為が一方的な現状変更や、既成事実化を一段と進めようとするものであるため、日本政府として「深刻な懸念を有しているほか、国際社会からも同様の懸念が示されている」ことを改めて強調した。
さらに南シナ海周辺が日本にとって、航行の自由およびシーレーンの安全確保が「重要な関心事項」であることを指摘。法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化のため「国際社会が連携していくことが重要だ」と強調して、能力構築支援や共同訓練などの取組みを強化すると説明した。
イージス・アショア配備、速やかな導入へ
北朝鮮は依然“差し迫った脅威”
小野寺大臣は、イージス・アショア配備に向けた取組みについて、いぜん北朝鮮の核・ミサイル開発が差し迫った脅威だとして、引き続き可及的速やかな導入を目指す考えを示した。
小野寺大臣は、米朝・南北で対話が進められているものの「具体的に北朝鮮が何か約束をしたということは、全くない」と話した。今後、米朝を含む様々な会談で、北朝鮮がどのような姿勢を示すのか、注視していくと、日本側の姿勢を説明した。さらに、それを前提として日本側の体制を「現時点で変更することはない」考えであるため、イージス・アショアの配備を急ぐ従来の考えに変わりはないとした。
また21日には秋田県知事が会見で、防衛省から6月1日にもイージス・アショアの配備について説明に来る見通しが示された。このスケジュールについて、地元との最終調整を行っているところだとして、日程について明言を避けた。秋田県との調整は、整い次第「しかるべき立場の者が現地に赴き、イージスシステムを含めた、イージス・アショアの説明を丁寧にしていきたい」と語った。
オスプレイ豪州沖事故、ダウンウォッシュが原因
小野寺大臣は、米軍で昨年8月に豪州沖で発生したオスプレイの墜落事故について、米側から事故調査報告書を公表するタイミングで、5月上旬に調査報告を受けたとし、機体の欠陥による事故の発生ではなく、着艦中のダウンウォッシュの影響で事故が発生したと説明した。
小野寺大臣は改めて、米軍が日本に駐留する上で、オスプレイを含む米軍機の安全確保が大前提との姿勢を示し、防衛省としては引き続き米軍側に対して、米軍機の安全管理の徹底を求めていくとした。また防衛省としても今後、同型機の導入を予定しているため、豪州沖での事故原因について「米側からの情報を受けながら、しっかりとした備え、対応をする必要がある」と話した。
※写真=小野寺大臣は、国際社会との連携強化のため、能力構築支援や共同訓練などに力を入れる。写真は昨年11月に海上自衛隊が行ったフィリピン海軍との親善訓練の様子(提供:海上自衛隊)