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2019.09.06

ウイングトラベル

東京一極集中が課題、関東広域への誘客促進

※写真=アレックス・カー氏

 

国際観光シンポジウムin関東、宿泊や消費拡大

 ラグビーワールドカップと2020東京オリンピック・パラリンピックの開催後を見据えた関東広域でのインバウンド戦略を考える「国際観光シンポジウムin関東」が9月5日、都内の神田明神文化交流館で開かれた。当日は、関東が抱える課題として、東京一極集中、例えば千葉県は訪問率の高さに比して宿泊率が全国最下位である点などが指摘され、オリパラ期間中を含めて関東近郊への誘致を進める必要性が指摘された。また、登壇したアレックス・カー氏は、観光地の“管理”の必要性を強調。京都など一部地域で発生しているオーバーツーリズム問題も念頭に、適正な入場料や入場規制などを設けて観光客数や観光収入、その使い道などを管理していくことが、今後の観光地経営において重要との見解を示した。
 今回の「国際観光シンポジウムin関東」は、国土交通省関東運輸局、日本版DMOの関東観光広域連携事業推進協議会、日本インバウンド連合会(JIF)の3者が共催した。
 冒頭あいさつした国交省関東運輸局長で日本政府観光局(JNTO)理事をつとめた経験もある吉田晶子氏は、「昨年の訪日外客数は3119万人、訪日外国人消費は4兆5000億円と過去最多を記録し、目標達成まであと一歩。一方で人数の増加に比べて消費額はまだ大きな開きがある。多数の訪問者による地域の負担も一部に見られ、インバウンド政策を進めるにあたり課題も見えている」として、観光政策が直面する課題を指摘した。

 

 消費拡大へ富裕層開拓に本腰、アジア偏重課題
 高科国際観光部長、オリパラで地方分散支援も

 観光庁の高科淳国際観光部長は、講演の冒頭、先週末に開かれたばかりの日中韓観光大臣会合について触れ、「日中韓観光大臣会合はかなり前から予定されており、韓国の仁川で開催されたが、今のタイミングもあり注目を集めた。マスコミも昨年の10倍ぐらい来た」とした上で、「生産的建設的な会議が行われ、国民の相互信頼を深めるために活発な交流を行っていくことで合意した」と述べた。

 

※写真=観光庁の高科淳国際観光部長

 

 アレックス・カー氏「地方の命は観光にかかっている」
「不便だから魅力」何でもない文化や自然が贅沢

 東洋文化研究者のアレックス・カー氏は、「地方の命は観光にかかっている。限界集落の問題は、少し前には全く救われない状況だったが、観光は神の救いの手、かなりのへき地でも救われる」として、観光が地方創生に与えるパワーを指摘した。例えば欧州でも、イタリアのトスカーナ地方や英国のレイク・カントリーは、日本と同様に定住人口が減っているが、「外部の人の長期滞在により、地域基盤が固まり元気なコミュニティとして残っている」として、観光先進国の欧州でも観光が地方経済に大きな効果をもたらしている点を指摘した。

 

 観光地はスポーク思考からハブ思考へ転換を
 中村JIF理事長、観光地経営の「LDMカレッジ」開講

 日本インバウンド連合会(JIF)の中村好明理事長は、「関東の大きな問題は、首都・東京がある。関東は東京に頼ってきたが、東京さえも人口減少局面に入り、自立を迫られる時代が10年以内に来る」とした上で、「東京をハブ、自らをスポークとする思考から脱して、自らハブとして生きる発想への転換が迫られている」と指摘した。

 

※写真=JIFの中村好明理事長