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2019.08.30

WING

防衛省20年度概算、最高水準の5兆3222億円を要求

多次元統合防衛力構築へ、新領域能力強化に注力

 防衛省が発表した2020年度概算要求は、防衛関係費が前年度比6.3%増となる5兆3222億円と、過去最高の水準となった。そのうち人件・糧食費が1.8%減の2兆1437億円となって、物件費が12.6%増の3兆1785億円とした。また物件費のうち、歳出化経費が17.3%増の2兆1614億円になり、活動経費含む一般物件費が3.7%増の1兆171億円となった。この概算要求では、新たな防衛計画の大綱(30大綱)と、それに基づく中期防衛力整備計画(2019-23年度)の2年度目として、多次元統合防衛力の構築を目指す。さらに、新領域能力の獲得・強化や、スタンド・オフ防衛能力、総合ミサイル防空能力を強化して、領域横断作戦の実現を図る構えだ。
 防衛関係費に含まないSACO関係経費、米軍再編に関する地元負担軽減分、国土強靱化のための3ヵ年緊急対策費については、今年中に検討する事項要求とした。新政府専用機の導入経費については3000万円を要求する。さらに、新規後年度負担は対前年度比4.8%増の2兆5170億円に。そのうち長期契約が65.5%減の652億円として、その内訳は垂直発射装置(VSL)の一括共同調達396億円、F-15機体構成品包括修理の256億円とした。

 

F-35Bは6機846億円で導入計画
いずも耐熱化など部分的に改修

 

 20年度概算要求で注目すべきは、短距離離陸垂直着陸(STOVL)機のF-35Bの取得と、護衛艦「いずも」の改修を要求したこと。F-35Bは6機で846億円を要求することとして、「いずも」は31億円でF-35Bの発着艦を可能とする改修を行う。大綱・中期防に示した「いずも」型護衛艦への発着を想定した戦闘機の運用に着手することになる。
 F-35Bの導入で要求したのは、6機で846億円。1機当たりにすると141億円になる。この6機は、今後5年かけて取得するとして、2024年度の配備を目指すという。またその他関連経費として、別途236億円を要求した。これは整備用器材などで、補用エンジンなどを含むかたちとなる。F-35Bを調達する主な理由として、電子防護能力に優れ、戦闘機運用の柔軟性を向上するためだとしている。長大な滑走路がない場所、護衛艦の甲板でも発着が可能なため、柔軟に戦闘機を運用することができるというのだ。
 一方の「いずも」改修は、31億円を求めてF-35Bの発着を可能とする部分的な改修を実施するとのこと。この部分的な改修とは、船体の耐熱性を高めることとして、さらに必要な照明設備などを設置する。これが予算として認められれば、今年度末ごろにも「いずも」は定期整備を行う予定であるため、これを機に船体の改修を実施する予定だという。その後、さらに改修が必要となった場合は、必要に応じてもう一度改修を行って、F-35Bが発着できる体制を整えていく考えだ。
 F-35Bは2023年度までに18機取得する計画で、最終的に42機まで導入する方針だ。「いずも」でF-35Bの運用が必要となった背景には、中国による太平洋進出が活発化しているため。今後の太平洋側をはじめとした航空対処能力を強化する狙いがある。
 日本にとって、太平洋側は特に広大な空域を有する一方、戦闘機が発着できる飛行場が少ないのが現状だ。硫黄島の飛行場は対応可能だが、日本全体として見れば、手薄感は否めない。その中で、有事の航空攻撃対処および警戒監視と、それらの訓練を行う必要がある。F-35Bのように短い距離で発着できれば、発着可能な場所がさらに増えるため、太平洋側の広大なエリアをカバーすることができる。さらに護衛艦へ搭載することができれば、さらに運用の幅が広がることになるという。現在の自衛隊では、戦闘機を運用できる飛行場が国内に20ヵ所しかないが、F-35Bの運用を開始すれば、45ヵ所の飛行場で運用することが可能になるという。

 

将来戦闘機開発は事項要求、年末までに予算化
日本主導で開発、将官の将来戦闘機開発官新設

 

C-2ベースのスタンド・オフ電子戦機

 

陸型イージス関連で122億円要求

 

空自に宇宙作戦隊新編
宇宙に対応する組織へ

 

サイバーで変わる陸自組織
AI採用のシステム設計も

 

相手レーダーの無力化など研究

 

※写真=F-35Bは今後5年かけて6機の取得を目指す(提供:米海兵隊)

※写真=F-35Bは今後5年かけて6機の取得を目指す(提供:海上自衛隊)

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※写真=C-2をベースにしたスタンド・オフ電子戦機の開発に注目