記事検索はこちらで→
2019.07.10

WING

警戒管制部隊はあらゆる経空脅威を監視する時代へ

自動警戒管制システムへ一元化、AIの活用も期待

 中部航空警戒管制団司令兼入間基地司令の岩城公隆空将補が本紙のインタビューに応じて、大綱・中期防に示された総合ミサイル防空について言及した。「警戒管制部隊が監視するのは、もはや航空機だけではない。弾道ミサイル、巡航ミサイルにも警戒が必要だ」という。それをレーダー上で捕捉して、対処していくためには、相当な練度が必要で、さらに場合によっては複数の目標に対して同時に行う必要にも迫られることが想定される。そのため、率直な感想として「これまでにない厳しい世界になるだろう」と説明した。
 総合ミサイル防空は、米軍ではIAMDと呼んでいる。単なる統合運用ではなく、陸海空すべての防空のアセットを組み合わせることで、総合的に運用することが求められる。「そういう意味では、警戒管制部隊が運用している自動警戒管制システム(JADGE)が1つのキーになる」とのこと。同システムでは将来的に、より総合ミサイル防空の環境に対応できるよう、近代化・改修を行って、あらゆる経空脅威に対応するという。それは、従来のイージス艦、パトリオットのみの弾道ミサイル防衛に、陸上自衛隊の中SAM、さらにはイージ
ス・アショアなどもシステムに加えて一元化を図るものと思われる。
 さらに将来的には、同システムへのAI技術の導入も期待されるという。ある程度AIに判断を任せ「少子化に突入しても、対応できるようなシステムを構築することが求められるようになるのではないか」という。もちろん完全無人にはできないため、最終的には人が判断することになるが、十分な日本の防衛のためには必要だ、と述べた。

 何が起こるか分からない緊張感
 スクランブル増で必要な練成訓練

 近年、中国軍進出によるスクランブルが著しく伸びている。18年度は999回で過去2番目に多い回数となった。こうしたスクランブルの増加は、主に南西航空方面隊および西部航空方面隊での対応によるもの。入間基地を含む中部航空方面隊では、それほど回数が増えているわけではない。中警団では、中空のスクランブル機に対して、レーダーによって指示を与える重要な役割を担っている。岩城司令によれば、数の増加よりも警戒するべきは、これまでの中国や北朝鮮の動きから「いつ何が起こるか分からないという緊張感」だという。
 中警団では、高まる緊張感の中でも従前と変わらず、隊員は冷静に任務を行っているとのこと。一方で、スクランブルの増加により厳しい状況となったのは、南西航空警戒管制団および西部航空警戒管制団で、任務が増えるほど平時の練成訓練に制約が生じることになるため、技術の維持が特に重要になるという。そのため、比較的落ち着いている中警団や北部航空警戒管制団では、練成訓練を十分に行うことで、「技術を習得した隊員を西や南西へ送り出すという役割が大きくなる」という。幹部として任官してきた隊員を一人前にして、厳しい地域へ送り出している。
 警戒管制部隊の任務は、戦闘機がスクランブルで離陸したとき、地上からレーダーで捕捉した目標に対する効率的な誘導を行う。また戦闘場面で複数の目標に対して、戦闘機編隊を割り振る。効率よくパイロットを誘導し、接敵させて、対処するのが第一の任務だ。そうした任務は、シミュレーションを含む、様々な訓練によって養っていくもので、場面に応じた判断力なども必要になる。判断力を養う訓練については、任務に就いているとなかなか経験できないという。
 一般に警戒管制を行う隊員が一人前になるまで、パイロットと同様の約5年はかかるという。隊員が判断力を養うためには、経験値だけではなく、訓練の時間も必要だ。ある程度は、一定の手順に従えばそれなりに対応できるが、本来のミッションを行おうとすれば、相当な期間を要することになる。

 入間基地で進むC-2本格運用
 今年度次期電波情報収集機配備か

 入間基地では、第2輸送航空隊がC-1輸送機を使用して航空輸送任務を行っている。このC-1は今後、新たな輸送機C-2への刷新が進められることになる。C-2はすでに美保基地で運用されているが、入間基地へ2020年度に1機配備する予定。その後順次C-2へ更新されることになる。また入間基地で運用する電波情報収集機は、C-2ベースでこれまで実用試験を行っていて、早ければ今年度にも1機配備する予定となっている。
 そのため、入間基地ではC-2の本格配備へ向けた整備が進められていて、「誘導路の改修、格納庫の建て替えなどを計画していて、その計画に則って、粛々と整備を進めている」ところだ。すでに駐機場と滑走路の整備は終わっていて、現在は誘導路の整備を行っている。この整備はC-2の本格運用に向けた施設の強度強化が目的。C-1の重量は43〜45トンとなっているが、C-2では141トンにもなる。そのため、C-2の重量に耐えられるように、施設強化の工事を行っている。
 また次期電波情報収集機については、岐阜の飛行開発実験団が入間基地で実用試験を実施。同試験をクリアすれば、早ければ今年度中に入間基地へ配備する予定だという。

 少子化対策は吃緊の課題
 隊員の生活に直結する設備改善を
 前向き・基本・改革で組織力発揮
 褒める大切さ、教わったのは警備犬