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2023.08.22

【潮流】被災地に配慮しハワイ観光促進を

 8月8日にマウイ島西部で大規模な山火事が発生し、日本の旅行者に人気のラハイナ地区やカアナパリ地区などが広範囲にわたり被災した。死亡者は既に100人を超え、今も懸命な捜索・復旧活動が行われている。
 マウイ島西部山火事で亡くなられた方々、そのご遺族に謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げる。一日も早い復興をお祈りする。
 ハワイ州のジョッシュ・グリーン知事は8月13日、マウイ島西部のラハイナ、ナピリ、カアナパリ、カパルアへの不要不急の渡航を8月31日まで控えるように緊急声明を出し、これらの地域に対して緊急事態宣言を発出した。
 一方で、マウイ島のカフルイ、ワイルク、キヘイ、ワイレア、マケナ、ハナの各地域、オアフ島、ハワイ島、カウアイ島、ラナイ島などのハワイ諸島への旅行には、現時点では影響はないことを強調した。
 そして、グリーン知事は8月16日に改めて「マウイ島西部以外のハワイ諸島への旅行は安全」を明言した。これは、マウイ島西部の山火事による旅行手控えがハワイ州全土に波及することを懸念してのことだ。
 ハワイ州観光局(HTJ)によると、グリーン知事は現地記者会見で、「パンデミックの時と同じように、私たちが下す決断はハワイ全島に影響を及ぼす。マウイ島西部への渡航は控えるべきだが、それと同時に、マウイ島西部以外の地域とハワイ州の他の島への旅行は安全ということだ」と強調した。
 ハワイへ旅行するときは、マウイ島西部で被災した人々とその地域に対して配慮と敬意を払うとともに、災害復興を支援する人々の活動に影響を与えない範囲でハワイ州(マウイ島西部以外の地域)に旅行してほしいと知事は要望している。
 海外で大規模災害やテロ事件が発生すると、当該地域に観光客が戻るのが、欧米と比べて日本は遅い。日本人特有の遠慮なのかもしれないが、被災された人々が苦しんでいるのに、そこへ観光で行くのは憚れるという気持ちが強い。どうしても、被災地域への旅行は自粛、自重する。
 実際に2004年12月のインドネシア・スマトラ島沖大規模地震と津波の被害、2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件の時も、日本からの旅行者が本格的に回復するには1年近くを要した。
 日本は2011年3月に東日本大震災を経験した。岩手県宮古市に好きなホテルがあり、再開した同年8月に被災地へ車で行ったことがある。その時の震災の光景は今でも目に焼き付いているが、行く前に思ったのは、こんなに早くに被災地を旅行していいものだろうかということだった。
 石巻市でボランティアに携わる人と知り合い、そのことを尋ねた。その人は「我々はボランティアで復旧のお手伝いをするが、地元が望むのは観光でお金を落としてくれることだ」と観光復興の重要性を語っていた。
 宿泊しているホテルでも風呂で一緒になった復旧支援の機動隊員に「あまり我々を気にしないで旅行を楽しんでください」と言われ、こちらが恐縮してしまった。
 ハワイ州知事が語るように、「被災地に配慮と敬意を払い、災害復興支援活動に影響を与えない範囲で旅行する」ように、旅行業界はハワイ観光を促進し、旅行者に訴えていきたい。
 まずは、マウイ島西部山火事被災者のために救援金を送ろう。救援金・義援金を拠出することは売名でなんでもない。売名行為、大いに結構ではないか。ハワイ州観光局はマウイストロング基金への義援金を日本円で受付するサイトを公開しており、日本旅行業協会(JATA)は会員各社に対して義援金を募集している。
 どれだけ時間が掛かるか分からないが、観光復興の時が来たら、マウイ島の被災地へJATAも視察団を派遣してほしい。マウイ島の観光復興を願う。(石原)