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2023.06.26

【潮流】コンプライアンス守り海外旅行復活を

 日本旅行業協会(JATA)の今年度通常総会が6月22日に開催された。総会のテーマは「海外旅行の復活」になるはずだったが、旅行会社の地方自治体の受託事業における過大請求の再発防止が最も重要なテーマに変わった。
 髙橋JATA会長は、総会の冒頭の挨拶で、「コンプライアンス遵守の徹底に向けて観光庁からの指導を受けながら、これまでより踏み込んだ対応策に取り組む」ことを一番に挙げた。
 高橋会長は「国・自治体からの受託事業においてJATAの信頼を著しく失墜するような事案が複数発生した。JATAとしてはここ数年来旅行会社によるコンプライアンス問題が続いていることを受け、セミナーの実施などを行ってきたが、それだけでは不十分であったと言わざるを得ない」と悔しさを滲ませた。
 コロナ禍にあって、旅行業界も雇用調整助成金の不正受給、Go Toトラベル事業の不正受給などが相次ぎ、そこからの信頼回復に努めていた矢先に、今度は、旅行業界の経営改善に大きな役割を果たしていた地方自治体からの受託事業で過大請求が発覚した。
 JATAでは、雇用調整助成金やGo Toトラベル事業の不正発覚を受けてコンプライアンス遵守の徹底化を図るために、経営者から幹部、従業員に至るまでのセミナーの実施などを行ってきたが、髙橋会長は「それだけでは不十分であったと言わざるを得ない。今後は観光庁からの指導を受けながらより踏み込んだ対応策を策定し実行していきたい。コンプライアンスは経営の根幹にかかわるものである。業界全体で今一度認識を共有化し、業界の信頼回復とコンプライアンスレベルの向上に取り組みたい」と述べた。
 既に、JATAは全会員に対する緊急点検を行い、「JATA会員の1割程度が受託事業を行っていたが、さらなる不正事案は報告されていない」と緊急点検でそうした事案がなかったことを明らかにした。既に、この事案では、旅行会社社員が逮捕され、刑事事件になっており、業界としては、コンプライアンスを遵守し、信頼回復に努めていくしかない。
 総会に来賓として出席した観光庁の池光崇審議官は、「観光分野はコロナの感染拡大により大変厳しい環境にある中で旅行・観光業界の事業継続と雇用確保のためにさまざまな支援を行ってきた。そうした中でコンプライアンス上で不正事案が出てきた。そうした事案が起きると社会から厳しい目を向けられることになる。今一度、法令遵守状況をチェックするとともにその環境が根付くように取り組んでもらいたい」とコンプライアンスの再徹底を総会に出席したJATA役員と会員各社に要請した。
 JATAの2022年度収支計算書を見ると、当初の一般会計収入予算額は5億2000万円だった。それが決算額は304億5500万円に約60倍に膨れ上がった。支出額も予算額は8億7900万円だったが、決算額は306億9300万円と約40倍と拡大した。地方自治体からの受託事業がどれほど大きなものを物語る。
 旅行会社、とくに大手旅行会社にとって、官公庁・地方自治体からの受託事業は、コロナ禍で本業、とくに主力の海外旅行事業が壊滅的な中にあって「救いの神」であったことは否めない。これがあったから、創業以来、最高の利益も生み出した。
 新たな事業で難しい局面も多々あったと思う。ただ、公共事業だからこそ透明性、公正な取引が求められることは言うまでもない。刑事事件に発展したことを見ても、事の重大性を改めて認識しなければならない。
 JATA全会員に対する緊急点検を実施して不正は見られなかったという。これ以上、不正が発覚すれば、信頼はさらに揺らぐ。コンプライアンス遵守のための継続的な対応策が必要だ。コンプラインスの遵守徹底なくして、海外旅行の復活はない。(石原)