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2023.05.01

【潮流】マスクを外して海外旅行

 2023年のゴールデンウィーク(GW)がスタートした。5月1日、2日を休めば4月20日から5月7日まで9連休となる。コロナ禍前なら、この9連休を利用して海外に行きたいところだが、4年ぶりの海外旅行に行こうとなるにはまだ時間が掛かるようだ。
 新型コロナウイルス感染症への不安もさることながら、円安・物価高による旅行費用と現地支出の高さを考えると、海外旅行はもう少し様子見となるのだろう。
 JTBのGW旅行動向調査によると、海外旅行者数は前年比では300%増の20万人だが、コロナ前の19年比では79%減で、まだ2割程度の回復とコロナ前水準に戻る道は険しい。HISのGWの海外旅行予約状況は、前年比は20倍だが、19年比はコロナ前の70%減と3割にとどまった。
 航空会社のGW予約状況は、訪日需要や北米・アジア間の接続需要が好調に推移し、日本発の予約も増えている。とくに、ハワイはコロナ前の9割まで回復しているという。
 パッケージツアーの利用はまだまだだが、個人手配やダイナミックパッケージなどの利用で、ハワイ、バンコク、ソウル、台北などのレジャー需要は回復には向かっている。 一方で、国内旅行の需要は旺盛で、今年のGWはコロナ前を上回る状況だ。とくに、ピーク時は全国の宿泊施設はほぼ満室で、キャンセル待ちで予約が取れない状況でGWに入った。JTBの調査では、国内旅行者数は前年比53.1%増の2450万人、コロナ前の19年と比べると、国内旅行者数は2%増と遂にコロナ前を上回った。
 海外旅行を円安や物価高で控えるなら、逆に、国内旅行は物価高はあるにせよ、海外とは比較にならないほど安く、コロナの不安を考えれば、訪日インバウンドと同様に国内旅行意欲が高まることは十分に理解できる。
 さらに、ゴールデンウィーク明け後は全国旅行支援が再開される。全国旅行支援はその役割を十分に果たし、残りの予算を海外旅行に回してくれたら有り難いのだが、それはともかく、国内旅行は今後もさらに伸びていくことが予想される。
 そうした中で、5月8日に新型コロナが感染症法上の規定が2類から5類に正式に移行する。さらに、同日に廃止される予定だった入帰国前の72時間以内の陰性証明またはワクチン3回目接種証明を4月29日から前倒して不要とした。これによって、最後の水際対策が撤廃された。
 松野官房長官は会見で、「連休中の海外旅行者の帰国を円滑化する観点から変更する」と語り、残る水際規制の前倒しの廃止は、日本人の海外旅行者に配慮した措置であることを強調した。
 欧州などと比べると、ここまで来るのに長い時間を要したが、ようやく新型コロナの水際対策が終焉を迎える。デジタル化の遅れを含めて、膨大な人件費を費やした空港での水際対策が本当に終わるのかはチェックしたいところだ。
 いずれにしても、5月8日の新型コロナ「5類」への移行を機に、各国・地域の政府観光局は日本人の海外旅行誘致キャンペーンが活発化している。JATAの海外旅行促進プロジェクトもスタートした。航空会社も日本発需要の回復本格化に向けてプロモーションを展開する。
 観光庁も「アウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」を発表し、諸外国との連携体制の強化、戦略的かつ効果的な取り組みの推進、安全・安心な旅行環境の整備・青少年交流の促進の3点を柱に掲げて具体的な取り組みを進める。
 和田観光庁長官は会見で、「ゴールデンウィーク明けを目途に今後の具体的な取り組みを発表したい。国民に海外旅行に行ってもらえるようなメッセージの発出も予定している」と語った。
 JATAの海外旅行促進プロジェクトもそうだが、水際対策という海外旅行への物理的な「足枷せ」がなくなる今、残るは心理的な「足枷せ」を取り外すことだ。まずは、海外旅行の醸成機運を高めることが重要になる。
 和田長官は「できることから速やかに実行し、アウトバウンド回復の遅れを取り戻したい」と述べており、政府と業界の想いは「海外旅行の復活なくして旅行業界の復活なし」で同じだ。5月8日からはマスクを外し、ひと目を気にせず、堂々と海外旅行に行こう。(石原)