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2023.05.16

【潮流】アウトバウンド回復に予算必要

 新型コロナウイルス感染症の規定が5月8日に2類から5類に移行し、ようやく社会生活が日常に戻りつつある。この日を境に外出行動の規制が解かれたことが連日報道され、コロナ禍の3年間、最も厳しい環境に置かれた観光、飲食、スポーツ・エンターテイメントなどのサービス関連業界に遅い「春」が訪れようとしている。
 この機を逃さず、観光庁と日本旅行業協会(JATA)は5月10日、観光庁が先に策定したアウトバウンド政策パッケージの具体的施策を発表した。3月時点で7割まで回復している訪日インバウンドに比べて、回復が4割に満たないほど遅れている日本人の海外アウトバウンドを回復するため、海外旅行の機運醸成を図り、官民一体で「今こそ海外!」を宣言し、キャンペーンを展開する。
 その記者会見には「今こそ海外!」の「当面の重点デスティネーション」に選定された24カ国・地域の政府観光局・大使館などの代表者が同席し、官民一体でアウトバウンドを盛り上げていくことを強く印象づけた。
 観光庁の和田浩一長官は、“海外旅行に行ってもいいんだ”、“また海外に行きたい”という機運を醸成し、「日本人が海外旅行に出かける、海外旅行を楽しむ好循環を生み出したい」と意気込みを語った。 政府がアウトバウンド政策に取り組むことは、1980年代の国際収支の黒字減らしのために日本人の海外旅行を1000万人に増やすことを目標とした「テンミリオン計画」以来だが、世界的にアウトバウンドを国が積極的に後押しすることはほとんどない。
 和田長官はその点について、双方向交流による国際間の相互理解の増進が将来的にインバウンドの拡大にも繋がることとと、国際航空ネットワークを維持・拡大する上で、インバウンドとアウトバウンドの双方向需要を回復することを挙げた。
 政府がアウトバウンド政策パッケージを実施することは画期的なことだが、それを具体化するには原資が必要になる。観光庁は若者のアウトバウンド促進で修学旅行への支援、国際観光旅客税を安心・安全な旅行システムの構築などに活用していることを挙げている。
 国際旅客観光税は訪日外国人、出国日本人を問わず出国者から一律1000円を徴収している。単純計算すれば、2019年水準なら外国人から318億円、日本人から200億円を徴収していることになる。
 チャットGPTで「日本の国際観光旅客税とは」と問うと、「この税金は2019年1月7日から開始され、1人あたり1000円が徴収される。ただし、日本国籍を持つ人や、滞在期間が72時間未満の人、または15歳未満の子供など、一部の旅客は免除される」と答える。そんな事実はないが、いわゆる「出国税」は国内の観光振興やインフラ整備などインバウンドに充当させるものだからそう答えるのだろう。
 和田長官はアウトバウンド予算措置への国際観光旅客税の活用について、「アウトバウンド向けに今までも安全・安心な旅行ができるようなシステムの構築を実施しているが、さらに踏み越えて具体的に何をやるかは、いろいろとハードルがある中でこれから考えていかなくてはいけない」と述べている。
 JATAはコロナ禍でさらに減少している日本人のパスポート保有率を高めるために、「パスポート取得費用サポートキャンペーン」を実施する。これには台湾観光協会、韓国観光公社、ハワイ州観光局、グアム政府観光局、空港会社などが協賛する。難しいことは承知だが、こうしたキャンペーンの継続・拡充などの予算支援が検討できないか。全国旅行支援があるなら、海外旅行支援があってもいい。
 さらに言えば、国内大手航空会社の2023年3月決算は大幅黒字を計上した。最終利益はANAホールディングスは894億円、JALは344億円。アウツバウンド促進の理由の一つが航空ネットワークの維持・拡充にあるなら、航空会社もキャンペーンにもっと協力すべきではないか。
 JATAの髙橋広行会長は、キャンペーンを通じて海外旅行の機運情勢を図り、夏休みに一定の回復の道筋をつけ、今年後半には本格回復、そして来年早期にコロナ前の水準の2000万人レベルに近づく方向性を示している。官民一体の予算措置が必要だ。(石原)