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2018.11.19

若者「海外体験プロジェクト」始動へ

 JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)は11月13日に開催した臨時全体会議で、2019年度の活動方針を発表した。その目玉として、「20歳初めての海外体験プロジェクト」を旅行産業界全体で実施していく計画を明らかにした。
 JATAの説明によると、若者の海外旅行は「何が起ころうと行く層」のヘビーリピーターが20%、「何があっても行かない人」の無関心層が20%、残る60%の海外旅行に行きたいが行っていない、行けない層に対して、海外旅行のムーブメントを起こす行動に出る。
 若者のアウトバウンド促進については、政府の「観光ビジョン」に明記され、観光庁は「若者のアウトバウンド活性化に関する検討会」を立ち上げた。その最終とりまとめ『次代を担う若者への「海外体験のススメ」』では、「海外体験」に焦点を当て、海外体験を広げるための国民的ムーブメントの醸成とモチベーションの向上・阻害要因の緩和・環境整備に着手することを提言した。
 観光庁は2019年度概算要求で、「相互交流の拡大に向けた若者の海外体験促進事業」として、新規に5000万円要求した。予算の決定は年末になるが、JATAでは予算の有無に関係なく、「海外体験プロジェクト」を進める方針を示した。
 この提言を受けて、「若者のアウトバウンド推進協議会」が発足する。官からは観光庁、外務省、文科省、経産省が参加、民間からはJATA、全国旅行業協会(ANTA)、そのほか教育界、経済界からも参加する。とくに、旅行産業界はJATA・ANTAとJOTCが連携して「海外体験プロジェクト」を推進する。
 観光局、航空会社などは、個別に若者の「海外体験プロジェクト」を実施しているが、独自に行うには予算の関係上、継続していくことがなかなか難しい。したがって、「20歳 初めての海外体験プロジェクト」が、その「プラットフォーム」となることに意義がある。
 「海外体験プロジェクト」は、たたき台として5日間の日程で現地視察、歓迎会、体験プログラム、グループ研修などを実施。地域は日程を考慮して東アジア、東南アジア、ミクロネシア各国・地域の中から10カ所選定。1組20人で10組、総勢200人で実施する。
 費用については、空港使用料や各種諸税以外は無料とし、航空運賃、宿泊費、地上交通費、体験プログラム、パスポート取得代金などについてはサプライヤーや政府観光局、空港会社などに支援を要請する。
 観光庁に対しては、「ムーブメント」を起こすために、若者の「海外体験」の重要性を広く国民に周知する広報戦略の推進を要請する。
 この「海外体験プロジェクト」は仮に10組とすれば、旅行会社10社がツアーを造成することになる。既に旅行会社は海外へのボランティアツアー、スタディツアーを実施しており、そのノウハウ、経験を蓄積している。
 若者の6割に該当する海外旅行に行きたいが行っていない、行けない理由は、「治安・言葉・お金」という。この「海外体験プロジェクト」の実施により、この3つの阻害要因を取り除くことができる。
 一番重要なことは、「普通の若者」に海外に行ってもらうことではないか。「海外体験プロジェクト」の経験を同世代に伝えることで広がっていく。まずは初めの一歩からだ。
 「20歳初めての海外体験プロジェクト」に対して課題もあるが、アジアでは既に乗り気の観光局も出てきている。また、ヨーロッパでは日程を長くすれば実現可能とする意見もある。
 「20歳初めての海外体験プロジェクト」を担当するJATA海外旅行推進部の權田部長は、「若者の需要喚起というテーマの最初のプロジェクト。ぜひ成功させたい。業界が力を合わせて需要喚起に取り組んでいることを紹介したい」と熱意を語る。
 その熱意を持続し、業界全体に浸透させ、プロジェクトを拡大していくことが大事。個別にバラバラに実施するのではなく、「20歳初めての海外体験プロジェクト」をプラットフォームとし、旅行産業界全体で、若者のアウトバウンドを促進していく機運を盛り上げていきたい。(石原)