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2023.03.22

観光DXレポート

観光DX活用し地域課題解決する活動が加速
国際観光施設協会など「LINKED CITY」本格始動

先日開催されたイベント「地域振興プロジェクト つなぐ、つながる、まちづくり」でも観光DX関連のさまざまな取り組みが紹介された

 

地域産業の再生・活性化に向け、観光や都市デザイン、地域で活躍する人材の創出に関して、DX(デジタルトランスフォーメーション)の力で各地域の持つ潜在的な魅力や経済力を最大限に発揮させるための活動がここにきて加速している。先日開催された日本能率協会によるイベント「地域振興プロジェクト つなぐ、つながる、まちづくり」では、国際観光施設協会やJTBを始めとした88の企業と5つの団体が参画する地域振興プロジェクト「LINKED CITY」の取り組みや、岐阜県・下呂市における観光DXの取り組みなどが紹介された。

 

LINKED CITY、観光DXのワンストップ化実現
旅行者周遊促進、観光地経営の高度化支援など

 

 LINKED CITYは、観光DXを活用し、地域資源を生かした観光ビジネスの仕組みづくりを構築する動きと、都市DX技術を活用し、地域のコミュニティづくり・関係人口の創出向上に向けた施策。そして人材関連のDXコンテンツを活用した地域内の活躍人材創出に向けた取り組みを組み合わせ、地域振興の達成を実現させようとするプロジェクトだ。
 このうち観光DX関連の取り組みにおいては、JTBを始め、ジョルダンやジョルデなどの観光分野のデジタルコンテンツを提供するプロジェクト参画企業が連携し、ワンストップソリューションでの観光DXの提供を実現する。
 LINKED CITYで構築する仕組みは、サービス間を横断的に連携する公共サービス基盤である「予定・移動・決済のローカルプラットフォーム」をベースとし、旅行者の利便性向上と周遊促進、観光地経営の高度化、観光産業の生産性向上のためのデジタルツールの提供と、観光デジタル人材の育成・活用の支援により、地域全体の収益を拡大し、地域活性化・持続可能な経済社会の実現を目指す。
 JTBは地域資源を活用した着地商品の磨き上げと、一元的にオンライン販売する仕組み「Tourism Platform Gateway」、来訪者の移動・購買データを蓄積・分析してマーケティング活用するデータマネジメント基盤「地域共創基盤」をLINKED CITYに提供。地域の魅力向上とファンづくりを支援する。
 ジョルダンは、主力提供サービスである乗換案内アプリをベースに、月間・約2億3000万回の経路検索データや移動データを同社固有のMaaSプラットフォームと連携することで、広域・教育を含めた移動データに加え、予約・決済・在庫管理なども含め、各種移動体験と地域コンテンツを繋いでいく。これを提供することにより、地域版のアプリサービスとして利用することができるとともに、イベントの情報収集や、着地商品の予約・決済・目的地への経路検索をワンストップで提供し、地域回遊のさらなる促進を目指すとしている。
 スマートフォン向けカレンダーアプリを提供するジョルデは、地域情報を集約して届けるプラットフォーム「地域情報カレンダー」を提供し、地域の観光・飲食事業者が登録した旬でユニークなイベント情報を来訪者に届け、旅行滞在中の行動変容を促進する。
 これらのサービスに加えて将来的には、マイナンバーに搭載された情報により生成された分散型IDを来訪者に提供する仕組みや、デジタル通貨機能を搭載した「マルチウォレット」と連携させた取り組みの展開も視野に入れている。分散型IDや、デジタル通貨の機能を連携させることで、地域の消費喚起とデジタルマーケティングの支援が可能となるという。
 この仕組みで収集された来訪者の購入データをさらなるサービス改善に利用することで、より魅力的な地域づくりに貢献することが可能となる。
 またデジタル通貨は、加盟店手数料が他の決済方法に比べ大幅に低減できるため、地域加盟店の負担を減らすだけでなく、来訪者が旅行中に使いきれなかったデジタル通貨は、旅行後にも続けてメタバース空間での旅行を楽しんでもらい、実際の旅行中に買いそびれてしまったものや、新しくメタバース旅行中に見つけたものの購入にも利用するができる。これにより、地域との結びつきを一過性のものではなく継続的なものつなげていくことも実現することができるとしている。

LINKED CITYで取り組む観光DXサービスの概要図

 

都市・人材DXと融合で地域経済活性化に貢献
関係人口創出で地域の活躍人材の育成も実現

 

 このほかLINKED CITYでは、サテライトオフィスの実現に向けたワンストップソリューションの提供や、二拠点居住やワーケーション、宿泊施設などに活用可能な新たな住宅コンテンツなども提供する。観光DX関連のプラットフォームと組み合わせることにより、関係人口の創出を促進するとともに、地域で活躍する人材の確保にもつながることから、観光分野における人手不足問題の解決にも大いにつながる可能性もありそうだ。
 LINKED CITYは観光、都市、人材DXを組み合わせ、地域間共創による新たなビジネスの形を生み出していくことで地域課題の解決と、新産業の創出を実現していくことを目指す。そして政府が推進する「デジタル田園都市国家構想」への貢献を目指していく方針だ。

 

岐阜県・下呂市、データ分析で最善な施策構築
観光客数をコロナ前の9割まで回復

観光分野のデジタル化への取り組みの重要性について説明する下呂市観光協会の瀧康洋会長

 

 今回の地域振興プロジェクトのイベントでは、LINKED CITYの取り組みとあわせて、観光分野におけるデジタル関連活動の推進における具体例として下呂市観光協会の瀧康洋会長による講演が行われた。下呂市観光協会では、データ分析に基づいて需要予測の実施やプロモーション活動を推進。旅行者の満足度を高めたことにより、2022年の観光客数をコロナ前の約9割まで回復させることができたという。
 下呂市は、近隣の高速道路の開通により、コロナ以前から観光客の流出が課題となっていた。そうした中で「客観的なデータを示すことで、岐阜県や地元の商工関係者に理解を求める取り組みを推進してきた」という。それに加えて、宿泊施設等は保有している観光客のデータを収集し、施設ごとに宿泊者数の推移や観光客の傾向を可視化する活動にも取り組んだ。この結果、他地域との比較や宿泊需要の予測も可能となった。
 さらに、コロナ禍においては「国内の新規顧客の獲得と既存の顧客のリピート率を高め、下呂市内の滞在時間を延ばすための取り組みに注力した」と強調する。その取り組みを推進する上でもデータの力が役に立ったと話す。 瀧会長は「宿泊やウェブサイトのアクセス、ユーザー行動データなどさまざまな情報を活用し、プロモーションを行うことで、効果的な施策を適切に行うことができた。またデジタルの存在がなければ手を打つことができなかったかもしれない」と指摘した。さらに「実施した取り組みの効果検証も行うことができ、常に改善を行い、最適化することができる。これにより、旅行者の満足度向上も図ることができた」と強調した。
 今年は全国旅行支援や県民割など国内旅行需要を喚起する施策が縮小していく可能性がある一方で、訪日インバウンドの急速な回復も見込まれる。日本国内の観光を取り巻く環境が変化する中で、瀧会長は「どこに手を打つべきなのかが見えてくる観光DX関連の施策はますます重要なものとなってくる」と述べ、さらなるデジタル関連の取り組みに打って出ていくことで、観光需要のさらなる上積みにつなげていきたいとした。

 

 

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