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2018.09.24

関西・北海道の訪日観光復興

 日本は安全・安心の国である。治安の良さは世界でも群を抜く。一方で、世界でも有数の災害の多い国でもある。今年に入って1月の草津本白根山の噴火、西日本中心の7月豪雨、関西を襲った8月の台風21号、そして9月の北海道胆振東部地震と、それこそ毎月のように大きな災害が続いている。
 海外旅行自由化の波に乗り、日本がアウトバウンド有数国の時代は、日本の災害は主に国内の問題として捉えられていたが、インバウンド振興の今の時代では、日本の災害は国際的により大きな影響を与える。
 訪日インバウンドが日本国内の土地価格に影響を与える時代である。訪日旅行者の滞在消費額もさることながら、インバウンドが日本経済に与える影響は想像以上に大きく、その分、天変地異や感染症などにより、訪日旅行者が激減するようになれば、その影響は計り知れない。
 アウトバウンド全盛の頃は、海外で災害、テロ、感染症などが発生すると、日本人旅行者の回復が最も遅いと指摘された。インバウンド隆盛の今は、旅行者激減の影響が観光地にどれだけの影響を与えるのかがよく分かる。
 観光庁は7月の西日本豪雨災害に対して、2018年度予算の予備費を観光復興支援に充当した。それ以前の熊本地震、東日本大震災でも観光復興支援の補助金を予算化した。
 既に、関西の台風被害では、関西国際空港第1ターミナル北の再開を機に、「一気呵成」に関西地区のインバウンド観光を活性化させるため、1カ月程度を集中キャンペーン期間と位置づけ、オールジャパンで「関西インバンド観光リバイバルプラン」として、「Welcome! KANSAI, Japan.」を展開することを発表した。
 観光庁は関西では観光・旅行を通じて、被災地に対する直接の支援につながる義援金付ツアー、ボランティアツアーの実施、風評被害を受けている主に関西向け旅行の促進など関西の旅行需要を喚起させる取組を実施する。
 韓国の盆休み、中国の国慶節の大型連休に向けて、1カ月の集中キャンペーンを展開し、関係団体や事業者に協力を呼びかける。
 この後には、北海道胆振東部地震の発生で、国内外で北海道旅行のキャンセルが続く北海道の観光復興キャンペーンに対する支援も想定される。
 溝畑宏大阪観光局長がソウルで開催されたUNWTOグローバルサミットで、関西のインフラ回復、観光受け入れをアピールしたが、大阪・関西と北海道は首都圏に次ぐ重要インバウンド市場だ。
 大阪は、今やLCCのハブ空港であり、アジアからの訪日旅行者の増大により、首都圏と並ぶインバウンド市場に成長している。今後も24時間運用の関西空港を中心にアジア・インバウンドのメッカとしての役割が期待される。今回の災害を教訓に、伊丹、神戸の国際化が図れれば、さらに重要の拡大が見込まれる。
 北海道は、今や世界屈指のリゾート地とせて注目を集めている。とくに、冬場はオーストラリアからの旅行者をはじめ、スノーリゾート地として急成長している。今後も世界の高級ホテルの開業が予定されており、日本を代表するリゾート地としての成長が期待される。
 訪日インバウンドの目標である2020年度の4000万人、2030年度の6000万人を達成するには、首都圏に次ぐ関西、中部、北海道、九州など地方への旅行者増が必須条件となる。
 とくに、成田空港、羽田空港は増枠してもいずれ限界に達し、2030年には関西空港の訪日旅行者数が最大になることが予想される。さらに、北海道の新千歳空港など地方空港が存在感を増すことになろう。
 災害の多い国であればこそ、災害に対して万全な対応が必要だ。とくに、どこで、どんな災害が起きても、訪日旅行者に正確な情報を伝え、安全を確保し、無事に帰国させるためのオールジャパンによる体系的な取り組みが必要ではないか。災害発生時の訪日旅行者へのケアが早期の回復にもつながると考える。(石原)