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2021.02.26

WING

川崎重工業、787ラインを東工場に集約へ

南北工場は一部部品づくり、倉庫や他カンパニーで活用
 
 川崎重工業が名古屋北・南・東の3工場で生産している787型機について、東工場に集約する方針を固めた。本紙の取材に応じた川崎重工業の下川広佳プレジデントが明らかにした。
 航空宇宙システムカンパニーで大きな痛手となっているのが、ボーイングのTier1パートナーとなっている民間航空機事業だ。下川プレジデントは航空会社の財務状態が危機的状況に追い込まれ、その影響が機体メーカーやエンジンメーカーに波及している現状に触れつつ、「我々もボーイングによる減産影響が非常に大きい」とコメント。「我々の事業は防衛と民間がおよそ50:50の構造となっているが、民間分野の売上が3〜4割近く落ちている」ことを明かした。
 なかでも営業利益面では大きな影響を受けているとし、「今年2月に公表した数字では、航空宇宙システムカンパニー全体で営業損失が250億円の見通し」にあるとした。
 ボーイングが民間航空機プログラムの大幅な減産へ舵を切ったことから、川崎重工業としても大きな対応を迫られるかたちとなった。
 「ボーイングのプログラムに合わせて減産を順次進めているところであって、カンパニーの人員リソースを機動的に配置する等の施策をとっていくことを余儀なくされている状況」にあるとし、同社のなかでコロナ禍からの業績回復が顕著な精密機器・ロボットなどの分野への人員の配置転換を図るなど、急場を凌ぐ策を打ち出さざるを得なくなったという。
 川崎重工業は様々なボーイングの民間航空機プログラムに参画しているが、なかでも787、777/777Xの減産は痛い。このうち787はコロナ禍前には最大月産14機ものレートで生産を進めており、川崎重工業も増産および派生型開発にあわせて、名古屋地区に名古屋北工場、南工場、そして東工場という3工場体制を構築した。同社は787プログラムで前部胴体、主脚格納部、主翼固定後縁の開発・製造を担当しており、このうち前部胴体はCFRPのワンピースバレルとして、世界屈指の技術で製造を担ってきている。名古屋3工場のうち、最初に完成した北工場は主として787-8用に、南工場は主に787-9用、そして最も機体が長い787-10は東工場で生産していた。
 旺盛な機体需要に沸いていたはずの航空機産業だが、新型コロナパンデミック発生によって状況が一変。ボーイングは2021年3月には、ワシントン州エバレット工場にある787最終組立ラインをサウスカロライナ州チャールストン工場に集約し、生産ペースも月産5機まで落とす。
 下川プレジデントは「東工場は787-10と787-9のマルチ工場となっていることから、東工場へ3工場の機能を集約する」ことに言及。その上で「787-10を製造することが可能な東工場に生産を集約することがベストだ。しかしながら北工場と南工場で部品を一部生産するほか、北・南工場にあるオートクレーブなどの生産設備を一部で活用する」とした。
 さらに、北・南工場については、中長期的には新規の民間航空機の量産プログラムでの活用を検討していく考えだが、当面の間は、「倉庫として活用するほか、他カンパニーの仕事の領域に活用する」こととして、準備を進めているという。

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