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2019.10.07

スポーツツーリズムの未来

 9月20日から始まったラグビー・ワールドカップは連日、大変な盛り上がりを見せている。とくに、9月28日の日本−アイルランド戦が、大方の予想を覆して日本が勝利したことで、世界中の注目を集めることになった。海外大手メディアが同試合の結果を「静岡エコパの奇跡」「シズオカ・ショック」などと表現し、図らずも静岡県まで少し有名になった。
 日本−アイルランド戦の勝利で、日本代表は予選リーグでトップに立ったが、したたかに勝ち点1を上積みしたアイルランド、強敵のスコットランド、サモアとの戦いが続き、予選リーグ突破はまだまだ予断を許さない状況だ。
 日本でのラグビー・ワールドカップの開催は初めてだが、これを上回るメガ・スポーツイベントとして、2002年にサッカー・ワールドカップが開催された。しかし、スポーツ・ツーリズムの交流イベントとしては、ラグビーの方が盛り上がっていると感じている。
 サッカーW杯から17年後という時の流れを割り引いても、今回のラグビーW杯は交流イベントが盛んに行われているように思う。W杯開催前の合宿地との交流はサッカーW杯でも行われていたが、ラグビーの観戦・応援で来日した人々と日本人との交流がこれほどまでに盛り上がるとは思わなかった。
 試合会場周辺はもとより、全国各地の繁華街などで、ビールを飲みながらの交流が続いている。また、出場各国・地域主催による交流イベントも開催され、ワールドカップを契機に、相互交流が盛んに行われている。
 ただ、日本戦や強豪同士の試合等は満席だが、地方開催のリーグ戦の試合は完売となっていない。静岡エコパスタジアムの試合も、日本−アイルランド戦以外の試合は、まだまだ空きがある。これを機会に、試合もさることながら、地方こそ外国との交流を深めてほしい。一緒にビールを飲めば、片言でも親しくなれる。
 国土交通省はスポーツツーリズムについて、「スポーツを『観る』『する』ための旅行やそれに伴う周辺観光、スポーツを「支える」人々との交流など、スポーツに関わる様々な豊かな旅行スタイル」と定義する。スポーツ資源を生かして、訪日外国人旅行や国内旅行の振興を図るということでは、今回のラグビーW杯は、来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて成功している。
 ただ、これに加えて、スポーツツーリズムは海外旅行振興にも重要な要素であることを強調したい。
 2005年12月に、日本でサッカーのクラブ世界一を決定するFIFAクラブ選手権(当時)が開催され、オセアニア代表としてシドニーFCが出場した。シドニーFCは、同年7月に横浜FC入りした三浦知良(カズ)選手を11月にゲストプレイヤーとしてレンタル移籍で獲得、カズ選手は2試合にフル出場した。
 今年は12月にカタールで、FIFAクラブワールドカップが開催される。今年はオセアニア代表として、ニューカレドニアのヤンゲンが出場する。クラブワールドカップに、ニューカレドニアのクラブチームが出場するのは初めて。
 そこで提案したいのが、ヤンゲンに日本のサッカー選手をゲストプレイヤーとしてレンタル移籍させることである。
 ヤンゲンは開催国カタールのアル・サッドと12月11日に対戦する。J1リーグは12月7日、J2リーグは11月24日が最終節、その後はプレーオフと続くが、物理的には出場は可能だ。
 2005年の当時、カズ選手は38歳だった。今回なら中村俊輔選手や小野伸二選手が適任か。33歳の本田圭佑選手に声を掛けてみる手もある。
 日本とニューカレドニアのスポーツツーリズムの架け橋に、カタールとの交流にも一役買う。こうしたチャンスはそうは巡ってこない。スポーツツーリズム振興のために、関係者にぜひ検討をお願いしたい。(石原)