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2019.09.02

横浜にIRは必要か

 横浜市がIR誘致を正式に表明した。IR誘致以前の問題として、2年前の市長選挙で林文子市長がIR誘致を「白紙」と表明したことから物議を醸している。「白紙は白紙」と言われても、最初は「誘致」、選挙の時は「白紙」、ここでまた「誘致」となると、市民にすれば「騙された感」は否めない。
 ここから先は、市長へのリコール、住民投票、出直し選挙、強行突破などの選択肢が浮かぶが、もう一度、IRで信を問う出直し選挙をすればいい。大阪ではIR誘致を選挙公約の一つに掲げて知事も市長も当選している。IRを実現したいなら、正々堂々と選挙の争点として戦うべきだ。
 それはともかく、林市長はIRの誘致を決定した理由として、人口減による横浜市の将来の税収減を挙げた。訪日外国人旅行者は東京宿泊が多く、横浜は滞在だけで、IRによる訪日旅行者の増加で税収を補いたいようだ。
 日本中の自治体が羨む横浜市が、これを言い出すのは違和感がある。数ある自治体の中で、横浜ほど魅力のある都市は少ない。IR反対派ではなくとも、横浜の観光素材を磨き上げて、諸外国にアピールすればいいわけで、IRが必須ではないと思う。
 訪日旅行者について言えば、世界の空の玄関、羽田空港は東京都と神奈川県の境に位置し、横浜へは目と鼻の先にある。羽田からの旅行者が東京に流れるなら、横浜の魅力をもっとアピールする策を講じるべきだ。現状は、羽田から品川、東京方面へ訪日客が流れる。東京オリンピックの開催で、この流れは加速する。
 また、横浜は神戸と並ぶクルーズの日本における発着母港である。これからも多くのクルーズ船が日本に寄港するが、横浜はその中心である。しかし、東京港をはじめ多くの港とクルーズ誘致への競争が激化する。横浜では、2025年に大型クルーズ船が寄港できるように再整備を進めている。
 横浜は空港、海港ともに恵まれた立地にある。しかも、いち早く西洋文化を取り入れた都市としてブランドイメージはトップクラス。これにIRが加われば、さらに魅力的な都市になる。横浜の都市としての魅力をさらに高めるために、IR誘致を図るとすれば、まだ良かったのではないか。
 あまり知られていないが、ニューヨーク市クイーンズ地区にリゾートワールド・カジノ・ニューヨークシティ、ボストン郊外の海沿いにアンコール・ボストン・ハーバーホテルがある。これらも税収確保、雇用促進、経済活性化を目的としたものだが、あくまで都市の魅力の一つとして、市街から離れて整備されている。
 IRはカジノだけが取り沙汰されるが、大型のコンベンションセンター、ホテル、ショッピングセンター、エンタテイメント、ゲーミングで構成された施設。IR大手のサンズが語るように「ひとつ屋根の下」にすべてが揃っており、IRは「完結」している。
 米国では、IRがラスベガスに集約されたり、大都市から離れて建設される。IRの目的は顧客を施設に「隔離」することにある。顧客の消費をIRの中で完結させることが最大の狙いだ。
 横浜はコンベンションシティとして、MICE誘致に取り組んでおり、MICEとIRは必ずしも合致しない。むしろ、国際学会等の誘致促進ではIRはマイナス要因にもなり得る。
 また、山下ふ頭は横浜の市街地に近接しており、あまりに近すぎて市民が反対することも理解できる。普通に歩いていて、目の前にIRが飛び込んでくるわけで、これは世界に一つとない光景になるかもしれない。
 カジノで有名な各都市は、脱カジノ、IRから多様な魅力を持つリゾート都市への成長をめざしている。ラスベガスはスポーツツーリズムを新たなフックとし、マカオは歴史と伝統、食文化などを含む国際観光都市の道を歩んでいる。
 横浜はIRに過度な期待をしないことだ。横浜をどういう都市にしたいのか。IRは横浜にプラスかマイナスか。そこを議論し、選挙で決着を付けたらいいのではないか。(石原)