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2019.03.29

ウイングトラベル

JATA訪日旅行提言、安心・安全確保を

 風評被害払拭、被災地支援パッケージ確立

 日本旅行業協会(JATA)は3月28日に会見し、観光庁に提出した「訪日旅行の持続可能な発展に向けた要望書」について説明した。要望書は訪日旅行者の「安心・安全」「訪日旅行のアップグレード」「地方の受入体制・DMO人財の育成」の3点に絞って提言した。
 堀坂明弘訪日旅行推進委員会委員長(日本旅行社長)は、「FIT化進展に伴う様々な課題、とくに昨年の災害を踏まえて、訪日旅行の安心・安全を確保し、またラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックを活用した旅行品質の向上、訪日旅行のアップグレード、さらに地方誘客促進へオールジャパンで受入体制整備・人財育成の3点を訪日旅行の持続可能な発展に向けて提言した」と強調した。
 具体的な提言書の内容について、吉村久夫訪日旅行推進委員会・提言書部会座長(JTBグローバルマーケティング&トラベル取締役)は、今回の提言について「旅行会社の実業に即したビジネスの具体案を示した」とした上で、第1の「安心安全の確保」は、自然災害の頻繁な発生と訪日旅行のFIT化を踏まえて、「全国各地で訪日FIT旅行者の利便性向上を図るだけでなく、不測の事態を回避する安心・安全を担保する仕組みの整備や対応が求められる」と指摘した。
 このために、自然災害発生時の対策として、「宿泊施設営業状況検索システム」などの採用、自然災害後の対策として、各国駐日大使館や日本在住外国人の協力による風評被害の払拭・軽減、訪日促進を図るための対策を提言した。
 また、効果を発揮した被災地への「ふっこう割」を災害発生ベースから復興支援策としてプログラム化し、被災地支援パッケージの確立を求めた。パッケージには、旅行会社のクーポン制度・既存商品の割引、補助金交付、受付窓口の一元化などを盛り込んだJATAが検討する「自然災害の発生を受けてその都度対応を図るよりも実効性の高いスキーム」の構築を期待した。

 

 訪日旅行アップグレードへ規制緩和求める
 旅行会社絡めたB2Bプロモーション展開を

 第2の訪日旅行のアップグレードは、FIT、リピーターが拡大している中で、JATAでは、これまで訪日旅行の「品質の向上」を訴えてきたが、より具体的に「訪日旅行のアップグレード」が必要とした。とくに、目的特化型のテーマ性の高いツアーの商品開発を阻害する要因を解消する対策を求めた。
 例えば、体験プログラムでは紹介プロポーザルシートの多言語展開、到着後の間際販売拡大へ手続き簡素化、ユニークベニューでは日本の城などでのレセプション拡大へ規制緩和を訴えた。
 そうした中で、今回の提言では、「旅行会社を絡めたB2Bプロモーションの強化」を提言した。欧米豪市場を中心に観光庁とJNTOによるB2Cプロモーションは成果を上げているが、この展開のみだと、日本に好印象を持った人が実際に日本に来る行動につながったかの検証が難しいとして、「日本をまだ販売していない新しい良い顧客を保有している海外の旅行会社を絡めることで、日本行きの商品、販売チャネルが確保され、より効果的な訪日旅行者拡大につながる」と指摘した。
 例えば、英国では訪日実績のなかった旅行会社が、この5年間で4500名や2000名を送客した旅行会社が複数あるとしている。

 DMOと旅行会社で訪日プロモーションを
 地方創生へDMOと包括提携を推進

 さらに、今回の提言には盛り込まれていないが、会見では、日本のDMOと旅行会社の関係強化について、現在、各地方のDMOは旅行会社と提携して商品開発等に取り組んでいるが、DMOと旅行会社によるB2CやB2Bのプロモーション展開についても言及した。
 吉村座長は「地方のDMOにはフランス、タイなど特定の国からの誘客に強みを発揮し、成果を上げているところがある」と指摘。旅行会社とDMOがタッグを組んで、そうした国々へプロモーションを展開することの可能性を示唆した。
 また、堀坂委員長は地方創生、地方活性化に向けて、旅行会社とDMOがプロモーション、商品開発、人財育成を含めて包括的に連携していくことの重要性を強調した。

 

 訪日旅行拡大へ外国人雇用視野に対策を
 IRのMICE誘致、1万人規模の大型施設必須

 第3の受入体制ではIR(統合型リゾート)のMICE誘致の推進を提言。とくに、世界に伍してIRにMICEを誘致するためには、現時点の収容規模(東京フォーラム5012人)では、「シンガポールやマカオのMICE開催先進地と同じ土俵に立てない」として、「世界の先進MICE年に比肩、それ以上の複合的なMICEイベントを受け入れられる施設の実現を目指すべき」と1万人規模の大型施設の必要性を提言した。

 

※会見する堀坂明弘JATA訪日旅行推進委員会委員長(左)と吉村久夫同委員会・提言書部会座長