ウイングトラベル特集
【潮流】サステナブルな旅の次なる歩み
人々が旅に何を求めているのか。また、地域の人々は旅行者に何を体験してもらいたいのか。立場の違いによって、そこに託す思いも変わる。観光の中で声高に叫ばれるようになった「サステナブル=持続可能性」も、人それぞれで異なる意味合いを持つテーマの1つであろう。
先日、観光庁主催の「サステナブルな旅アワード」の表彰式が行われた。このアワードは今回が3回目の実施となり、富山県西部観光社 水と匠が企画した「カイニョお手入れツアー」が大賞を獲得したのをはじめ、10点が表彰された。
大賞に選ばれた企画は、散居村の屋敷林である「カイニョ」の整備体験を旅行商品化したもので、地域に残る文化資源を「稼げる力」に転換したことが評価された。その他の受賞企画も、地域ならではの素材や体験を観光商品として位置付けており、高い評価に値する内容だった。
2015年に国連のSDGs(持続的な開発目標)が定められて以降、日本でも観光だけでなくさまざまな場面でサステナブルという視点が意識されるようになった。日本という地域性もあるのかもしれないが、これまではどうしても環境への配慮に軸足が置かれがちだったのが実情だ。観光分野でもその傾向は強かった。
しかし、今回の旅アワードの受賞作品の顔ぶれを見ると、新たな考えのもとでサステナブルを提案する動きが浸透してきたことが見て取れた。
今回の旅アワードの審査委員長を務めた北海道大学観光学高等教育センターの小林英俊客員教授は、受賞作品を高く評価した視点として「再生」「若者の進出」「稼げる値付け」の3点を挙げた。第1に、持続可能な循環型社会を目指す経営理念を持つ事業者が増えてきた点だ。第2に、若い世代が新しい感覚で持続可能な観光地域づくりに取り組み始めた点である。第3に、関係する地元の事業者や施設、団体に適正な対価を支払い、一過性にとどまらない観光商品として作り上げている点である。
地域のユニークな風習や文化体験を幅広い人々に伝えることは重要だ。そこに若年層が中心世代として参加し、収益性も伴うことで、旅行商品として定着していくことを願って止まない。
これからは、このトレンドを旅行者と地域住民にどう浸透させていくかがポイントになる。昨年は世界から約4200万人を超える外国人が日本を訪れた。一方、国内を旅行する日本人のどのくらいが「持続可能性」を旅のテーマとして位置付けただろうか。結果として「持続可能な旅」を堪能していたとしても、現時点で日本が持続可能な観光デスティネーションだと言い切るのは難しい。
そのためにも、サステナブルな旅アワードの受賞作品に通じる発想を持つコミュニティが各地で生まれてくることが欠かせない。とりわけ、都市型の「サステナブルな旅」が登場してくることを望みたい。
例えば、公共交通で回遊できる体験導線の整備や、街なかの歴史資源の保全に寄与するツアー造成、地産食材を扱う飲食店やリユースを実践する店舗との連携など、都市生活の延長線上で参加できる仕組みが必要になる。旅行者が無理なく選べる選択肢が増えれば、サステナブルは「意識の高い人の行動」ではなく、日常的な旅の作法として根付いていく。
地方誘客の切り口としてサステナブルな旅を推すのも1つの方法だが、再生型、若年層の関与、稼げる力の3つを備えた持続可能な旅行企画をゲートウェイとなる都市部でも体現できれば、旅行者がサステナブルを理由に日本を選ぶ動機になり得る。そのためにも、多くのコミュニティが登場してくることを期待したい。
そして、歴史や文化の切り口だけではなく、多彩な切り口で持続可能な旅を実現できるデスティネーションであることを、日本人・外国人を問わず訴求していく必要がある。観光関係者によるプロモーションの活性化にも期待したい。
もちろん筆者も情報を広く発信する立場の一員として、日本を「サステナブルデスティネーション」へと昇華させていく流れに向け、発信を惜しまない。(嶺井)
