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2022.07.21

「ハワイ・オンライン・フォーラム」第2回目開催   続き

 

「プレッジ」が各地に浸透
「言葉の壁」にはテクノロジーで対応

 

 

 プレゼンテーションに続いて行ったパネルディスカッションでは、航空新聞社「週刊ウイングトラベル」編集統括の石原義郎をモデレーターに、3つの観光局がリジェネラティブ・ツーリズムについて議論した。

まず、いち早くパラオで始まった「プレッジ(誓約書)」について、パラオ政観の芝村氏は、「パラオは世界に先駆けて環境保護に熱心。小さな国なので、できることも限られているし、財源も限られている。今ではSDGsやサスティナブルがあたりまえのようになっているが、パラオが世界に先駆けて、こういったメッセージを出したことは、世界向けて本気度、危機感を発信できたと思っている」と説明。

 またカナダ観光局の半藤氏は「カナダでも、先住民の島ハイダグワイ(ブリティッシュ・コロンビア州)でプレッジを導入している。島の人たちの、歴史、暮らし、環境に理解を深めてもらい、その暮らしに倣って、旅をしてもらうことを目的としている」と紹介。ハワイについてもハワイ州観光局のヴァーレイ氏は、「カウアイ島やハワイ島など、島ごとでプレッジが出ているところがある」と述べ、各地でこうした動きが強まっている。

 リジェネラティブ・ツーリズムを実践する上での「言葉の壁」についての質問では、カナダ観光局の半藤氏が「旅に行く前のコンテンツでどれだけ伝えられるかが重要。共感を持って現地へ行って頂き、現地ではガイドやツールを工夫して交流を促し、共感してもらえるような仕組みづくりを進めている」と紹介。

パラオ政観の芝村氏は「日本の統治時代もあり、日本由来の言葉も多く、パラオの人たちは親日。観光に従事するパラオ人は日本語ができる人が多い。パラオはガイドが同行するツアーが多いので、ガイドが丁寧に説明する仕組みができている。この仕組みはこの再生型観光の実践する上で重要だと思う」と語った。

ハワイ州観光局のヴァーレイ氏は、「言語の壁は大きい。英語のプロダクトはたくさんあるが、日本語で説明する仕組みとして、テクノロジーがとても大切となる」と指摘。博物館での教育プログラムにおけるモバイルテクノロジーの活用といった具体例を交えながら、「ハワイに住む日本人も多いので、そのリソースをどのように活かすかということで、カリスマガイドへのサポートや、観光局の予算を地元のプロダクト開発に割くという流れもできている」と述べ、今後への期待を見せた。

 

リジェネラティブ・ツーリズム実現に

欠かせない地元コミュニティの意識と参画

 

一方、地元コミュニティがリジェネラティブ・ツーリズムにどう関わっていくのか、という問いに、ハワイ州観光局のヴァーレイ氏は、「ハワイでは、DMAPという各島の再生型観光への取り組みが始まったが、重要なことは地域のコミュニティのリーダーがその中に入っているということ。地元の人が守りたいものを持続していくか、外からではなく、内から力を入れていきたいと思っている」とコメント。
 カナダ観光局の半藤氏は、「コミュニティのための観光という視点、そして旅行者の人生が豊かになるという2つの視点があると思うが、地域のリーダーシップが重要。なるべくみんなを巻き込み、旅行者にも共感を持って関わってもらい、そのコミュニティに巻き込んでいきたい。そして大切な場所をより良いものにして、意義のある交流をし、お互いが幸せになってほしい」と述べ、リジェネラティブ・ツーリズム推進における地元コミュニティが果たす役割の重要性を強調。

 パラオ政観の芝村氏は、「パラオは586の島があり、人が住むのは9つの島。人口が2万人弱、仮に10倍の20万人の観光客が来ると、パラオの自然や文化を伝える観光業の根本を保つのが大切。地元住民が再生型観光を理解して、毎日の生活に落とし込むことが必要だと思う。同時に消費者の意識の向上が重要。これにより、お互いにウィンウィンの関係になると思う」と語った。

 

求められる旅行者は?


意識を持った旅行者、地元コミュニティとの交わりを

 

リジェネラティブ・ツーリズムを推進していくにあたり、「日本の旅行者に何を求めるか」について、パラオ政観の芝村氏は、「パラオはもともとダイビングの聖地。ダイバーは環境意識、目的意識が高いお客様で、もともと環境が始まる前から、海を汚さず、サンゴもおらず、ごみも持ち帰るといった意識が高かった。しかし、世界遺産に登録されてから、香港やマカオから、多くのチャーター便が入ったこともあり、環境意識の温度差が生まれてしまった。コロナが終わってから、自然、環境に特化した旅行が好まれると考えている。パラオ・プレッジを通して、みんなと一緒に考える。観光と環境はそれぞれが支えあってできていると考えている。今後は理解のある方に来てほしい。ますます自然を好む方が来てくれると思っている」と言及。

 カナダ観光局の半藤氏は、「旅行者にお願いしたいことは、今まで観光名所をいかに回るかに重点を置いていたかと思うが、今後はぜひ時間をとってそこに滞在してもらって、本物のカナダならではの体験を深く味わってほしい。カナダ人は自分のストーリーを旅行者にシェアするのが大好き。多様な文化、人々、自然があるので、その土地の思いをシェアしたいという気持ちが強い。例えば、レストランでこの食材はどこからきているの?など、言葉の壁があるが、どんどん質問して、話かけてほしい」と述べ、地元コミュニティとの交わりを提案。

 ハワイ州観光局のヴァーレイ氏は、「日本もハワイもパラオも島国。島国の価値観は似ていると思う。ハワイは日本の価値観に共感する人が多い。歴史的にも日本との結びつきが強い。双方向の旅行を促進したい。姉妹都市など、お互いの文化交流を重要にしたい」と強調。また「これまでは、訪問者、座席供給数、消費額を、観光局の目標指標としてきたが、今は、州民の観光に対する満足度と旅行者のハワイに対する満足度、そして3つめが消費額と、求めるものががらりと変わった」と説明。こうした状況を踏まえ、「今後はマインドフルな旅行者、意識の高い旅行者に来て欲しい」と語った。

 

業界一丸となって取り組むことが重要
リジェネラティブ・ツーリズムを推進する上での協業の必要性

 

 最後に「リジェネラティブ・ツーリズムを推進していく上での課題は」という質問に対し、パラオ政観の芝村氏は、「パラオは環境政策では進んでいるが、再生型観光については、現地、そして旅行者の相互の理解が必要。新しいツーリズムを開く切り口として取り組んでいきたい」と意欲を示した。
 続いてカナダ観光局半藤氏は、「取り組みを始めて、これから旅行者に共感してもらえるか、そして旅行会社の方々に商品として取り込んでもらえるか、まだまだ課題は多い。背景のストーリーや目に見える効果をうまく伝え、その価値に共感して自らつながってもらえるように力を入れる必要性を感じている。カナダ単独でできることではないなと思っている。他のデスティネーションと一緒に共創、連携の場、新しい潮流を作っていく場に一緒に参加していきたい」と述べ、デスティネーションを超えたより大きな枠組みでの協業の重要性を強調。

 さらにハワイ州観光局のヴァーレイ氏は、「やはり協力して、新しい旅のあり方を一緒に提唱していければと思っている。新しい観光のあり方については、マスからニッチ、協議すべき内容もたくさん出てくると思う。旅行業界が一丸となってやっていくことが大切だ」と語り、旅行業界を巻き込んだ協議を提唱した。

 パネルディスカッションの最後に、航空新聞社石原編集統括は「今後、リジェネラティブ・ツーリズムを推進するにあたり、旅行会社と観光局、現地サプライヤーとが共作、協調をしていく上で、旅行会社の責任が重大だと考えている。地域の人が再生型観光を求めているということを意識して旅行していきたいと思うし、インバウンドに関しても同じことが言えると思うので、再生型観光は、今後もとても大切なキーワードになる」と述べ、リジェネラティブ・ツーリズムの重要性を改めて強調、旅行会社が果たすべき役割の大きさを指摘した。

 

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