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2021.11.12

WING

高い金属加工技術持つダイキン工業特機事業部

戦車砲弾や誘導弾弾頭等製造して日本を守る

 

※写真=74式戦車の射撃訓練で戦車砲弾を搭載する陸自隊員。精確な砲弾があるからこそ隊員の練度も向上し、ひいては有事の際に敵を撃破することが出来る(※写真は陸上自衛隊岩手駐屯地公式ツイッターより引用)

 

 日本の安全保障の第1線に立つ自衛隊。その活動に必要な各種装備品の多くは大小様々な国内企業が開発や製造、輸入などそれぞれの立場で関わっている。防衛産業と呼ばれるこの業界に参画している企業の中には、参画していることが知られていない企業が意外と多く存在する。今回WINGはそうした企業の中でも空調機器大手であるダイキン工業を取材し、戦車砲用徹甲弾をはじめ、各種誘導弾の弾頭・信管の製造について話を聞いた。
 ダイキン工業といえば空調機器と考える人も多いだろうが、実は同社の出発点は意外にも戦前の軍需産業に遡る。ダイキン工業は、1924(大正13)年に初代社長の故山田晁氏が39歳の時に陸軍大阪砲兵工廠を退官し、大阪金属工業所(1963年にダイキン工業に改称)を設立したのが始まりだ。当時は航空機用ラジエーターチューブや信管、薬莢などを製造していたが、海軍からの委託のかたちで現在の主力事業につながる空調機の研究を開始し、1941年には潜水艦冷房機用フロンガスの製造開始している。また陸軍の航空機も川崎航空機工業(当時)から製造を一部引き受けていたという。しかし、1945年の敗戦により、軍需から民需転換図り、進駐軍向けフロン生産の特需と人員整理で経営破綻危機を乗り越えている。更に、特機事業では朝鮮戦争の米軍特需により、1952年から米国から81mm迫撃砲弾の受注を皮切りに3年間で200万発の各種砲弾を製造。1957年からは防衛庁(当時)向けの砲弾の受注を開始している。
 ダイキン工業で防衛装備品関係を扱うのは同社特機事業部だ。特機事業部の売上は、ダイキン工業全体の売上高では1%未満に過ぎないが(ちなみに、同社の代名詞といえる空調事業は全体の91%を占めている)、特機事業部は日本で唯一戦車砲徹甲弾を作っている部門で、他にも各種砲弾や誘導弾用の弾頭・信管等を製造している。特機事業部の2020年度の売上高は約180億円(民需事業含む)という。特機事業部は「当社は陸上自衛隊・海上自衛隊向けの砲弾を製造しており、小さいものでは口径40mmから大きいものでは127mmまで幅広いサイズの砲弾を作っている。陸上自衛隊向けの主力は戦車砲用徹甲弾および訓練弾で、81mm迫撃砲弾、40mm自動てき弾銃用弾薬、84mm無反動砲用弾薬などがある」と説明。「国産誘導弾の弾頭の弾頭についてはほぼ当社が担当し、製造している」と答えた。そのほかにも航空機部品も製造しており、戦闘機の降着装置用部品、バルブなどのほか、エンジン用消火器なども扱っているとのことだ。

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