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2020.07.30

WING

次期戦闘機開発体制、呼び方変われど本質変わらず

各社能力を結集、モノづくり体制が根幹

 (前号の続き)航空自衛隊が運用中のF-2の後継機となる次期戦闘機の開発が、国際協力を視野に入れつつも日本主導にていよいよその歩みを踏み出した。開発初年度となった2020年度の防衛省の開発予算額は111億円で、初期的な戦闘機システムの設計に充当することになった。関連経費を含めると、総額約280億円の予算を計上しており、防衛省は、戦闘機システムの機能・性能の初期設定を行うほか、設計において準拠する規格や基準についても検討する。さらには機体の最適形状についても検討を進めていく方針だ。
 そうしたなかでいよいよ、国内はもちろんのこと、国際的な協業パートナーを含めた開発体制のあり方が、今年12月に向けて固められていく。
 開発体制のあり方では従来から、特別目的会社(SPC)の設立、共同事業体(JV)、あるいはプライムコントラクター方式など、どのような体制が相応しい体制なのか、議論が交わされてきた。
 本紙の取材に応じた 三菱重工業防衛・宇宙セグメントの阿部直彦セグメント長(執行役員)は「(体制について)色々な意見があるが、モノを開発するプロセスは、如何なる体制であっても技術的な観点では変わらない」と話した。
 「SPCあるいはJVなど、これらはあくまで運営方法の話であって、戦闘機を開発しようとすれば、実質的に一社で行うことができるものではないし、各社が結集してチームを発足して取り組むことになる。モノづくりの仕方には変わりはない」とし、例え呼び方は変わったとしても、その開発体制の実質が大きく変わるものではないとの認識を示した。
 「各社が有する能力・ノウハウを結集しなければ、まずはシステム設計を完成することができないし、当然基本設計、詳細設計にもつながらない。また、各社が独自の製造設備を有している。システムを組み上げるためには、各社の力を結集しなければならない」とコメント。「(SPC、JVなど)呼び方が変わってくることによって、技術的な側面ではなくて、どちらかといえば組織の管理・運営の仕方、責任のあり方が変わってくる」と強調。「我々としては、開発体制はいかようにも。政府の方針に従って対応する」として、政府方針に従って同プログラムに参画し取り組んでいく意向を示した。
 ただし、阿部セグメント長が気にかけている点の一つが、人材活用の柔軟性だ。
 システム、構造、電気、試験、さらに、基本設計、詳細設計等、それぞれの得意分野を持った人材が、次期戦闘機の開発段階に応じて入れ替わる。担当するところが終了すれば、そのスタッフは専門性を活かし次期戦闘機以外の次の仕事に従事するのが効率的である。
 しかしながら、「とくにSPCの場合、そこで人材を抱え込んでしまうと、柔軟な人の出入りが難しい状況が生じないか危惧する」として、民間企業としてデメリットも少なくないことを訴えた。
 人の出入りに制限がかかってしまえば、次期戦闘機に従事する各社の優秀なエンジニアが、担当作業の閑散期或いは終了時に、各社に戻って専門性を活かした仕事に従事する機会を喪失してしまう可能性が生じる。さらには、各社の研究所などに所属する人材は、防衛事業に特化しているわけではなく、防衛以外にも、様々な製品の開発プログラムに携わっている。そうした人材の活用にも制約が生じかねない。
 阿部セグメント長は、SPCにしろ、JVにしろ、どのような体制にしても、人材を柔軟に活用できる体制を構築すべきことを強調した。

 

日本主導型開発
インテグレーション確保が必須

 

次期戦闘機の無人機化も視野
無人機技術の社内研究を加速

 

極超音速ミサイル
スクラムジェットの研究進む

 

駐留米軍MRO受託
次期3カ年中に数十億規模

 

駐留米軍MRO事業
AAV7など日米共通装備にチャンス

 

自衛隊の人手不足にソリューション
部隊整備を民間の手に

 

H3が年度内打上げへ
厳しさ増す市場環境

 

再使用型ロケット
宇宙事業の新たな「弾」に

 

※図1=次期戦闘機開発体制とりまとめは年末に向けいよいよ佳境に(提供:防衛装備庁)

※図2=極超音速飛翔体イメージ(出典:防衛装備庁技術シンポジウム資料)

※写真=AAV7のような日米共通装備品で駐留米軍からMROを受託することに期待も

※図・写真=RV-Xを使い日仏独3機関で研究開発が進む再使用型ロケット(提供:JAXA)