記事検索はこちらで→
2019.11.19

WING

装備庁、DMSJ研究で2モードとも良好な燃焼確認

必要な推力獲得の見込み、極超音速飛翔可能に

 防衛装備庁が研究を進める「極超音速飛行を可能とするスクラムジェットエンジンの研究」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との研究協力によって、燃焼器コア部を試作。燃焼試験では、極超音速時と、超音速時の両モードで良好な燃焼を確認した。さらに、この燃焼試験の解析によって、目指す飛翔に必要な推力を見込めることが分かった。ゲームチェンジャーとなりうる極超音速誘導弾の研究が進んでいる。
 これは防衛装備庁が去る12・13日に行った技術シンポジウムで示した研究の成果。この誘導弾が実現すれば、マッハ5の極超音速で飛翔しながら、高度・軌道の変更して目標まで到達することになる。相手側の地対空ミサイル(SAM)からすれば、高度制限を超える非常に高い高度を高速で飛んでくる。高高度の迎撃システムでは、下限の下を飛んでくる。非常に迎撃が難しい高度を高速で飛び、かつ軌道変更ができて、動きが予測しにくいもの。
 燃焼器の燃焼試験では、燃焼器のコア部分を試作。JAXA角田宇宙センターの基礎燃焼風洞で試験を行った。ジェット燃料であるJetA-1を用いて、極超音速で巡航飛行するスクラムジェットモードと、超音速で加速するラムジェットモードで燃焼試験を実施。両モードとも安定して燃焼すること実証した。また、モード別に燃焼する部分が異なることを確認することができた。さらに、取得した燃焼器壁面静圧分布によってエンジン内部の流れの解析を行った。すると、実機相当のエンジンでは要求する飛翔に必要な推力を得る見込みとなった。

 

ブースターで超音速まで、弾頭が極超音速へ

 

 この研究の目的は、極超音速の巡航と超音速の加速を両立させる「デュアルモード・スクラムジェットエンジン(DMSJ)」を成立させること。さらには、即応性を確保するジェット燃料を採用すること。そもそもスクラムジェットエンジンは、自機が一定以上の速度をもって飛行しなければ作動できないエンジン。極超音速の気流を空気取り入れ口で圧縮。その超音速の気流に燃料を噴射して燃焼させることで推力を得る。大きな特徴は、ダクトのような構造となっていて非常にシンプルな形状であること。しかしながらマッハ5以上の飛翔が可能であって、その速度域では最も推力・燃費性能の高いエンジンとなる。世界各国で関心を示していて、研究開発が進められている。特に米国ではX-51プログラムとして先行して研究を進めているところだ。
 スクラムジェットエンジンを搭載した極超音速飛翔の仕組みは、飛翔体に加速するためのスクラムジェットエンジン部分を搭載する。これに、ある速度まで加速するためのブースターが付くことになる。打ち出した直後は、ブースターによってスクラムジェットエンジンが作動する速度まで加速する。一定の速度に達したら、ブースターを切り離し、スクラムジェットエンジンを作動させてさらに加速。極超音速で目標まで飛翔する。
 この研究は装備庁として経験が浅い。強力な研究パートナーとして、JAXAとの間で研究協力を結んでいる。JAXAが目指すのは宇宙輸送機などで、異なるアプリケーションになるが、超音速から極超音速へ加速していく技術、ジェット燃料を使用する技術は両者共通していて、研究協力が成立している。

 

即応性確保のためジェット燃料採用

 

今後エンジンシステムレベルで地上試験も

 

※図1=DMSJの課題克服について(提供:防衛装備庁)

※図2=2モードでの燃焼試験結果(提供:防衛装備庁)

※図3=スクラムジェットエンジンの概略(提供:防衛装備庁)