2020.11.23

海外旅行事業者が危機的状況

 国内の新型コロナウイルス感染者が拡大している。Go Toトラベル事業に関して言えば、利用者、事業者双方が完全防止対策を徹底し、同事業を計画通りに進め、経済社会活動との両立を図ることが肝要と考える。
 Go Toトラベルで感染者が拡大している報告はない。感染拡大の原因をGo To事業に押し付けるのは間違っている。家庭、職場、繁華街、クラスター発生源となりうる場所などで、一人ひとりが感染防止対策を怠らないことが最大の防止策ではないか。
 菅義偉首相は11月16日の観光戦略実行推進会議で、「観光関連では全国に約900万人の人々が従事しており、それぞれの地域を守っている。わが国が観光立国として生きていくために、感染対策と両立させながら、何とか現状を乗り越えていく必要がある」と述べ、Go Toトラベルの運用継続を明言した。
 11月に入ってから、旅行業界では事業を終了する動きが活発化してきた。そのかたちは様々だが、新型コロナウイルスの収束が見えない中、7月からのGo Toトラベル事業の展開で、旅行業、宿泊業、観光施設業などの観光事業者は一息ついているが、海外旅行、訪日旅行が主たる事業の企業はGo Toトラベルの恩恵を受けられず、厳しい状態が続いている。
 まだ、先に光明が見えれば、それを頼りに踏ん張ることもできるが、現預金、内部留保も少なくなっていく中で、このままで行くと、12月までの年内、来年3月までの年度内を目安に、会社の行く末を決断する会社が増えてくると懸念している。
 こうした状況を憂慮して、日本旅行業協会(JATA)と全国旅行業協会(ANTA)は連名で、日本ツアーオペレーター協会(OTOA)は単独で、観光庁などに対して個別に要望書を提出した。要望書はともに国際交流の早期再開を求めるもので、JATAとANTAはビジネストラックに準ずる観光目的の「準ビジネストラック」を設定し、東京オリンピックでの海外からの旅行者の受け入れ準備に半年は必要として、1月からの海外旅行、訪日旅行への適用を要望した。
 14カ国・地域は国際往来の受入を決めている韓国、中国、台湾、香港、マカオ、シンガポール、タイ、ベトナム、モンゴル、ラオス、カンボジア、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランド。
 また、これに併せて、米国ハワイ州など、日本人を観光目的での入国を認めている国・地域についても、観光目的での出入国許可の検討を要望した。
 レジャー目的の「準ビジネストラック」では、企画旅行主催者が参加旅行客の旅行中・後の行動履歴を管理把握できるエスコート型の管理型旅行により、出入国を再開するというもので、旅行会社が責任を持って旅程を管理することになる。
 ビジネストラックでは、帰国後に14日間の自宅待機は免除されるが、自宅と勤務先との往来に限られ、公共交通機関の利用はできない。「準ビジネストラック」もこれに準じた扱いとなろうが、もし「準ビジネストラック」が実現した場合、どういう形になるかも注目される。
 OTOAも海外旅行の早期再開、海外旅行の需要喚起を強く要望した。とくに、海外で活動するツアーオペレーターは次号存続が極めて困難な状況に直面しているとして、上記の14カ国・地域やハワイ、グアムなどの海外旅行の再開を要望した。
 OTOAは合わせて、雇用調整助成金の特例措置の延長、国税の納付猶予延長、事業者間取引適正化なども要望した。ツアーオペレーターは売上が全くない状態が長期化し、多くの企業が現預金の少ない厳しい経営環境を強いられており、中には債務超過の危機に瀕しているという。この状況は、旅行会社よりも深刻かもしれない。
 事業者間取引適正化を要望書に入れたのは、今後、海外旅行が再開されたとしても、仕入れ素材費用の前払いやデポジットの立替払いが困難になることが想定され、また、旅行会社による不当な取引の強要が増加する可能性を懸念してのことだ。
 こうした旅行業界の深刻な現状を政府や世間がどこまで理解しているか。訪日旅行再開のためには双方向交流が前提で、そのためには海外旅行も同時に再開しなくてはならない。海外旅行の担い手が危機に瀕していることを声を大にして訴えたい。(石原)