2020.08.10

コロナと日本人の良識

 新型コロナウイルス感染者が日毎に拡大していく中で、Go Toトラベル事業を継続するのか、お盆の帰省はどうなるのか、夏休みを前に議論が沸騰している。経済社会活動の再開に向けてのGo Toトラベル事業の実施と感染症防止のための休業や外出自粛に対して「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」との指摘もある。
 菅官房長官はGo Toトラベル継続を疑問視する声に対して、「地域に密着し、地域を支える全国900万人の旅行関係者が瀕死の状態で、旅館、ホテルは対前年稼働率が約1割。そうした人々の生活を守っていくことも政治にとって極めて重要なこと」と語気を強めて語った。
 Go Toキャンペーンの最初に、このことをもっと訴えるべきだった。疲弊した観光関連産業とは、訪日インバウンド消費が消滅して苦しむ地域経済そのものではないか。それを補填するのは国内旅行消費しかないわけで、Go Toトラベルはそのための起爆剤の意味を持つ。
 中国や韓国では、感染者を封じ込めた後、国内旅行キャンペーンを実施し、感染の拡大もなく成功している。これを受けて、中国、韓国では国際交流の再開に向けて調整を進めている。どうしても、日本が遅れを取っているように見える。
 Go Toキャンペーンの後は、海外旅行、訪日旅行の再開につないでいかなくてはならないが、その絵がまだ描けていない。まずはGo Toトラベルで安全な旅行を経験することから始まるのではないか。
 菅官房長官も、西村経済再生担当大臣も、赤羽国土交通大臣も、判で押したように語るのは、観光事業者がガイドラインを遵守した感染防止対策を徹底し、旅行者が旅先のあらゆる場面で三密を避け、手洗い、マスク、大声を出さないといった基本的な感染対策を徹底することを求める。
 だが、これを守らない人がどれだけ多いことか。日本ではロックダウンも非常事態宣言もないし、罰則規定もない。あらゆる法律を駆使して網を掛けようにも、基本的にはお願いベースだ。ただ、接待を伴うバー・クラブ、酒を提供する飲食店、パチンコなど事業者に対する規定が問題になるが、一方で、もっと利用者に対して強く要請することが必要ではないか。
 ニューヨーク州のクオモ知事は、1日500人ベースに感染者が減速している状況下で、経済社会活動の再開を進める中、感染状況が改善していることは好ましいことだが、全米各地の感染拡大には、『若者やバー・レストラン』などでの感染拡大防止のための措置が遵守されていない事例が散見され、そうした行動は規制を軽んじるものであり、公衆衛生にとって脅威となるだけではなく、良識に欠けるものと厳しく批判している。
 同様なことを担当大臣や都知事が言ってもいいのではないか。罰則規定がないからこそ、リーダーはもっと強い調子で発言してほしい。感染防止対策の成功は、一人ひとりの意識に掛かっている。
 新型コロナウイルスの感染者拡大が、PCR被験者が増加したからというのは、世界では通用しない。既に、グアム準州は日本を「Low Risk Area」から除外した。ハワイ州も9月からの日本人旅行者受入れを再検討している。欧州でもそうした動きが出てくるかもしれない。
 日本だけではない。欧州もスペインをはじめ感染者が再び増加している。欧州は非常事態制限を解除し、経済社会活動を再開、出入国制限を緩和していく中で感染者が再び増加している。アジアでも感染が再び拡大し、非常事態宣言、緊急事態宣言の再発出、延期をする国が出始めた。世界全体が新型コロナウイルスの「第2波」感染拡大に対応する時期に来たのかもしれない。
 今年の夏休みは、事業者と利用者が感染防止対策を徹底できるかどうかに注目する。いわば、「日本人の良識」だ。それができれば、秋以降の海外旅行の再開など、経済社会活動のレベルアップにつながっていくのではないか。(石原)