2020.06.29

坂巻新体制にエールを送る

 日本旅行業協会(JATA)会長を6年間務めた田川博己JTB会長が退任し、新会長に坂巻伸昭東武トップツアーズ社長が就任した。あまり使いたくない言葉だが、コロナ禍による「未曾有」の経営環境下での業界団体トップ交代に、文字通り「業界一丸」となって乗り切るしかない。乗り切るというより「生き延びる」という方が適切かもしれない。
 まずは田川前会長に「本当にご苦労さま」と言いたい。と言っても、田川氏は今後も東京商工会議所副会頭をはじめ様々な役職、委員を歴任し、JATAの特別顧問にも就任されたので、今後も旅行業界の地位向上のためにお力をお借りしたい。ひとまず、区切りとして、6年間のJATA会長としての尽力に敬意を表したい。
 田川氏はJTB社長就任後の2011年に東日本大震災、2014年にJATA会長に就任後も海外ではISによるテロ、国内では大規模災害の頻発、政府による出国税(国際観光旅客税)の導入など、それこそ逆境にさらされながらも、旅行業界に多くの功績を残した。田川氏を一言で言えば、「逆境に強い男」のイメージがある。
 また、押しの強さは誰にも負けず、ラグビーならフロントロー、相撲なら電車道の印象を持つ。本人はナンバー8か華麗なステップのバックス、四つ相撲が好みかもしれないが。
 トップの影にはいい参謀がいる。田川前会長を語る上で、同時に退任した越智良典前理事・事務局長の功績も忘れてはならない。文字通り、陰に陽に田川会長を支えてきた。二人とも前に行くので、いささか強引なところはあるが、業界団体としてのJATAの政治力が、二人の力で一気に増したことは否定できない。
 とくに、新型コロナウイルスの感染拡大で、旅行業界が存亡の危機にある時に、雇用調整助成金の助成限度額が1万5000円まで引き上げられたこと、国内の需要喚起キャンペーンに1.3兆円が計上されことは、「田川−越智体制」最後の功績として指摘しておきたい。
 それもこれも「政・官・民」の協力があったからで、全国旅行業協会会長の二階俊博自民党幹事長、田端浩観光庁長官という旅行行政、観光行政に精通し、民間の力を何よりも理解する人が政界、官界のトップを務めていることも業界団体としてのJATAの地位を高めた。
 さて、田川氏の後を受けて、JATAの新会長に坂巻伸昭東武トップツアーズ社長が就任した。旅行業界がコロナ禍による前例のない危機的状況の中での会長就任に対して、全面的に応援したい。会長は「坂巻氏しかいない」という状況の中で、敢えて引き受けた「男気」を高く評価する。
 坂巻氏は会長就任の挨拶で、「JATA設立時の原点に立ち返り、会員のために何ができるかを常に意識した協会運営を進めたい」と語り、そのために「協調と共創」が必要と訴えた。
 今、何よりも必要なのは、旅行業界、JATAが一丸となって、この危機を乗り越えることだ。まずは、他の業界団体を含めて、旅行・観光業界全体が融和し、民間が一枚岩となって、政・官・民一丸でコロナ禍に負けない体制を構築するしかない。
 坂巻氏ほど人心掌握に長けた人はいないと思う。人を引きつける魅力がある。まさに、JATAが置かれた状況では適任と言える。
 田端観光庁長官は、旅行産業界への要望として3点を指摘した。1.観光産業界を挙げて一致団結して取り組むこと、2.リアルエージェントとして企画提案力を発揮すること、3.Go Toトラベル事業の地域共通クーポンを通じ、地域経済への波及効果の最大化に協力すること。その上で、「国際交流の再開に向けて準備を進める」ことを求めた。
 JATAが一丸となって進むべき道は決まった。坂巻会長、菊間潤吾・堀坂明弘・高橋広行副会長、志村格理事長、池畑孝治理事・事務局長の体制で実行していく。道は厳しいけれど、坂巻新体制の船出にエールを送る。(石原)