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2019.06.10

進化する米国旅行産業

 今年は5月に南アフリカ・ダーバンで「インダバ」、6月にアメリカ・アナハイムで「IPW」と2つのトラベルトレードショーを取材した。この2つのB2Bの商談会、ネットワーキングを見て、日本との圧倒的な差を感じた。
 最先端国の米国で差を見せつけられるのは、ある意味仕方ない気もするが、南アフリカと比べても差は開いている。アジアでもシンガポール、中国などのイベントとも相当の差があるのではないか。
 日本のトレードショーの最大の弱点は、オンラインに付いていけていないことだ。どこのトレードショーでもスマートフォンのアプリを作り、そこでチェックすることが当たり前になっているが、日本では大きく遅れている。とてもMICEの先進国になるなどと恥ずかしくて言えない状況だ。
 今年のIPWアナハイムのプレスルームでは、デスクに置かれているPCがデスクトップからノートブックに変わった。プレスリリースは紙からUSB、そしてオンラインに変わった。いわゆるショーデイリーの紙版はホテルの部屋に今も毎日配布される一方で、オンラインで毎日同じものが見られる。サプライヤーのニュースもすべてオンライン化された。毎日のイベント・スケジュールも紙とアプリが併用される。
 トラベルトレードショーとして比較すると、IPWとツーリズムEXPOジャパンには圧倒的な差がある。海外、とくに米国では日々進化するテクノロジーを取り入れている。事務局をIT専門家で固めるぐらいの刷新が必要かもしれない。
 IPWのメインスポンサーの一つはエクスペディアである。IPWに来ると、世界の旅行産業の変化を目の当たりにする。ウーバーもエアビーアンドビーも日常の世界となり、日本との違いは開くばかりではないか。
 日本の折りたたみ携帯電話を「ガラパゴス」などと、とても笑えない。ラグビーW杯や東京オリンピック・パラリンピックで、世界の人が来日した時、ウーバーがなくて驚く人が出るかもしれない。
 IPWやインダバは米国やアフリカへのインバウンド促進のための商談会で、ツーリズムEXPOはアウトバウンド・インバウンド・国内の三位一体のイベントで、違いがあるのは承知しているが、旅行産業としてもっと進取の気概を持つべきではないかと考える。
 今年の海外旅行者数は1-4月で10%増と伸びているが、旅行会社の取扱額は減少している。OTAのシェアが伸びているのだろう。そこは世界と同じだ。旅行者にとっては、OTAと旅行会社の区別はほとんどない。
 日本の旅行業界でも、OTAの存在を改めて考える時期に来ているかもしれない。OTAを旅行業と定義することは難しいと思っていたが、こうした現実を見ると、日本の旅行業界でOTAを位置づけることの重要性を考えずにいられない。
 例えば、ツーリズムEXPOにOTAの出展を働きかけるというようなことではなく、ツーリズムEXPOのメインスポンサーになるようなビジネスパートナーの道もあるかもしれない。
 JATAは、旅行業界の新しいビジネスモデルの企業をもっと取り込むべきではないか。勝手なことを言えば、新旧が交わることで新しい風が業界に吹くかもしれない。国内でも旅行関連で新しい企業が続々と誕生している。
 ブランドUSAのクリス・トンプソンCEOは、「世界は進化しており、人々は多様な方法で情報を収集している」と述べ、変化する世界の旅行者に米国の情報を伝えるために映画、スマートフォン、インターネット、トラベルトレードなどあらゆるチャネルを使っていく。アウトバウンド、インバウンド関係なく、日本の旅行業界も進取の気概が必要でないか。(石原)