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2020.05.11

新たな日常に向かって

 新型コロナウイルス感染症が世界に蔓延し、日本も「緊急事態宣言」下にある。新型インフルエンザ等対策特別措置法では強制力はない分、一人ひとりの判断に委ねられる。
 ゴールデンウィークが終わる5月6日までは外出を控え、感染者を抑制し、徐々に1日の感染者が減少していくことで、その先の制限解除のステップを踏み、旅行需要の回復に向けてキャンペーンを展開する道筋を描いていた。
 既に、新型コロナウイルス感染症のピークを過ぎた世界各国・地域が経済・社会活動の再開に向けて動き出している。
 ドイツ、米国、ニュージーランド、中国、韓国、ベトナムなどの各国政府・自治体に続いて、欧州、オセアニア、アジアの各国・自治体で、次々に制限解除の段階的な行動計画が発表された。
 中には、ベルギーのように5月から規制の解除が始まり、6月には国境封鎖、入国制限、外国旅行解禁を視野に入れた国も出てきている。
 経済活動再開には、感染再発防止への安全・衛生面での厳しい条件が付加されているが、感染拡大のピークを過ぎたことから、新型コロナウイルスへの感染封じ込め対策にある程度成功したと判断し、各国は危機的な国内経済と社会生活の回復に舵を切っている。
 無論、東欧・ロシア、中南米、アフリカのように、新型コロナウイルスの感染が拡大し、今がピーク、これからピークを迎える国々もあり、封じ込め対策の制限解除に慎重を期すべきは言うまでもないことだ。
 だが、5月1日の段階では、日本の制限解除の実施計画は示されていない。4月7日に補正予算で「Go To キャンペーン」は決定しているものの、そこまでの段階的に制限解除の道筋を示してほしい。
 旅行業界としては、一日も早く同キャンペーン事業の「Go To Travel キャンペーン」を展開したい。ただ、それも旅行会社が生き延びることが前提となる。現行の雇用調整助成金、持続化給付金だけでは、現預金がどんどん目減りする。5月を乗り切れるかどうか不安が募る。
 宿泊業界を中心に、旅行会社を含めて新型コロナウイルス感染症の倒産が100件を超えた。このままの状態では、時が経つほどに、倒産が加速する。倒産は債権者に迷惑を掛ける。業界に未来がなければ、速やかに廃業することが選択肢の一つになる。
 実際、4月の官報公告だけで、3月を中心に旅行会社の廃業は約80社に達した。5月に入れば、更に増えていくだろう。旅行業界だけでなく、ホテル、旅館、レストランなどでも老舗の廃業が目立ってきた。廃業は後継者の問題とも絡むが、休業すれば、雇用調整助成金、持続化給付金などでは賄いきれない。とくに、都心に本社や店を構えれば、家賃などのコストが大きな負担になる。
 「Go To キャンペーン」の前に家賃補助をしろという意見があるが、二者択一ではない。どちらも重要であり、会社を存続させて「Go To キャンペーン」を展開する。どちらも必須なのだ。
 ところで、5月6日までだった「緊急事態宣言」を延長する方針が決まった。延長が決まったなら、そこで、「Go To キャンペーン」に向けての段階的な制限解除の計画を示してほしい。
 制限の緩和、解除は、感染の状況と連動する。収束が長引けば、修正すればいい。欧米と連携して、制限解除計画を公表することが重要だ。
 今後経済を再開し、感染が収束したとしても、元の日常には戻らない。いや戻れないだろう。リーマンショックの後の「New Normal」(新たな常態」は、経済的にはともかく、社会的には馴染みはなかった。だが、「ポスト・コロナ」は「新しい日常」が待っているのではないか。
 テレワーク、オンラインの普及に象徴されるように、コロナ後は、経営、労働、家族、生活、社会の全ての日常が変わる。旅行も大きく変わるだろう。旅行業界も変わり始めている。(石原)