2019.05.13

旅行相談の有料化

 JTBが「旅行相談料」を試験的に有料化したことが話題を呼んだ。これに対するSNSなどでの反応は賛否両論だが、「サービスは無料ではない」とする意見が若い人の間に多く、サービスに対する概念は変わりつつあるようだ。
 約款には有料と明記されているが、一般的な慣例から旅行業界では窓口相談料は無料で対応してきた。旅行業界だけでなく、銀行をはじめとする窓口業務は、これまで基本的に無料が当然だったが、これを改める機が熟してきたのかもしれない。
 航空会社による旅行会社への航空券コミッションの廃止から始まり、今やボリュームインセンティブの見直しなどにより、旅行会社は収益構造の改革を迫られている。これまでも旅行会社は顧客に対してサービスフィーを求めることが議論されてきたが、そのための一歩として、JTBが旅行相談料の徴収を始めたことは評価したい。
 今や、何でも手数料、使用料の時代で、スポーツ観戦のチケット購入でも発券手数料を徴収される。ペーパーレス化してもシステム使用料を上積みされる。ましてや、窓口業務の人的サービスを無料で受けられる時代は終わったと考えるのが妥当ではないか。
 旅行相談料の有料化には、旅行会社側の事情もある。インターネットで商品が買える時代に、店舗を維持することは年々難しくなっている。全国に店舗を持つ大手銀行は中長期計画で、ドラスティックな店舗撤退・再編を打ち出している。
 旅行会社も同様で、このまま推移すれば、大手旅行会社は店舗の再編を検討せざるを得ないと懸念される。
 旅行相談の有料化は、まずは首都圏の2店舗でスタートした。首都圏では入店者が多く、窓口業務も混雑化するため、有料化は賛否はあるものの比較的受け入れやすいと思われる。
 問題は地方店舗での旅行相談料の有料化だ。地方店舗の採算性向上は、旅行会社の課題の一つであり、地方店舗で有料化を浸透することが採算性向上の一助となる。地域の人々に旅行相談料の有料化が受け入れられるかがポイントになろう。
 地域との接点である店舗は地方にとっても貴重であり、地域の活性化とも関わり合う。そのためにも店舗を維持するための対策として、旅行相談料を有料化することは地域にとっても重要課題と考える。
 旅行会社はオンライン旅行商品と店舗旅行商品を明確に分けている。オンラインで販売している旅行商品を店舗で購入を申し込めば、手数料を上乗せして販売する。旅行相談料の有料化は、オンラインと店舗の差別化をさらに明確化することになり、店舗の存在をアピールすることにつながる。
 今後の課題は、JTBが始めた旅行相談の有料化に他社がどのように対応していくかだろう。店舗を展開する大手旅行会社が有料化に踏み切れば、それがスタンダードになる。一方で、無料化を続ければ、JTBに対するアドバンテージとなるが、コストを自らかぶることになる。競争上、旅行相談の有料化、無料化は各社の判断に委ねられる。
 OTAが台頭する以前から、旅行業界はビジネスモデルの変革を議論してきた。航空会社のチケット直販化、ゼロコミッションの時代が到来し、収益源だったチケットの代売手数料を失ったからだ。そこにインターネットによるOTAが台頭し、今度は航空会社からのボリュームインセンティブも厳しくなっている。
 島国の日本では、海外旅行は航空座席があってこそ成り立つ。クルーズも成長してきたが、旅行の大半は航空機を利用する。そのため、航空会社への依存度は高いが、旅行会社と航空会社の関係は大きく変わりつつある。
 OTAの台頭の一方で、旅行会社の存在が変容している。航空会社に頼る時代は終りを迎え、旅行会社は利用者から正当な対価を得る時代に入った。旅行相談料の有料化もその一つで、世界的には有料がスタンダードであり、旅行業界全体で標準化を進めたい。(石原)