2019.04.22

LCCは旅行会社を使え

 日本のLCCはこの先、どこへ進むのか。全日空はピーチ・アビエーションを存続会社として、ピーチとバニラ・エアを統合する。ピーチは日系では唯一LCCの成功モデルであり、一方でバニラは設立したものの赤字が嵩んでいた。両者に競合路線はないが、バニラの路線が足かせになる可能性はある。だが、バニラとの統合に関係なく、不採算な路線はカットし、独自の経営を続けていけば、ピーチはLCCとしてさらに存在感を高めていくだろう。
 航空業界の経験則だと思うが、これまでの日本、米国の航空会社を見ても分かる通り、FSCがLCCを設立して、ヒト・モノを送り込んで成功した事例は極めて少ない。仮に設立しても独立採算で任せたほうがうまくいく。FSCとLCCはビジネスモデルがすべての面で違うことを徹底しないとほぼ失敗する。
 オーストラリア、シンガポール、韓国などがいい例で、カンタス航空、シンガポール航空、大韓航空、アシアナ航空などは系列のLCCを別会社と割り切っている。結果的に路線を補完しているが、それはFSCでは採算が難しい路線でも、LCCなら採算の合う路線があるからで、日本の航空会社がそこまで割り切れることができるかどうかが、LCC成功の鍵になるのではないか。
 今回のJAL系のZIPAIRの西田真吾社長の話を聞くと、課題は多いと感じずにはいられない。まずは「訪日取り込みが存在意義」と語るように、訪日外国人旅行者の利用に注力するということだが、基本的に、日本人は日本の航空会社に乗るように、外国人は自国の航空会社に乗る。それにより、JALもANAも成長してきた。
 しかし、今や日本の国際線は外国の航空会社の路線によって支えられており、訪日の拡大は日本の航空会社の存在意義を小さくし、加えて、日本の旅行者も外国の航空会社を使うことに抵抗はなくなった。
 しかも、昔のように「日本の航空会社の品質が高い」ということも幻想であり、シンガポール航空をはじめアジアの航空会社のサービスはJAL、ANAに勝るとも劣らない。こうした話を聞くと、「本当にLCCを運航するのか」と思わざるを得ない。
 ZIPAIRが運航する成田−バンコク線は、スワンナプーム空港にJAL、ANA、タイ国際航空、ドンムアン空港にスクート、ノックスクート、タイ・ライオンエア、タイ・エアアジアXが運航する激戦路線。
 もう一つの成田−ソウル(インチョン)線は、韓国系航空会社8社が運航する成田−バンコク線以上の超激戦路線だ。JAL、ANAは羽田−金浦線のみで成田路線から撤退、日系LCCも「裸足で逃げ出す」ほどの激安価格市場である。
 これはもう、外から見ると「飛んで火に入る….」のような状況ではないかと思ってしまうが、正直、どこに勝算があるのか分からない。
 しかもZIPAIRの機材は787-8で、座席数は約280席。競合するLCCは小型機のA320や737を投入するなかで、中型機で、さらにシートピッチもゆとりを持たせるという。人件費もアジアのLCCよりも高いのではないか。
 以前、JALにはジャパン・エア・チャーター(JAZ)からJALwaysに至るタイ、フィリピンの乗務員を使うウェットリースによる低コスト航空会社があった。LCCの先駆けのようだったが、コスト倒れした。
 現在、旅行会社はLCCを使い分けており、低価格な旅行商品を特定のLCCを利用して販売している。海外旅行へ行くなら、輸送手段はFSC、LCCを問わない人が増えている。
 ZIPAIRはブランドイメージとして「シック」を基調とし、いわゆる「ポップ」なLCCとは住み分ける。それなら、旅行会社のパッケージツアーに座席を供給して、787-8型機の座席を埋めたら良いのではないか。スクートも787型機を運航しているが、旅行会社の団体などにも席をブロックで供給しているという。
 LCCはウェブ予約の個人FIT客が基本だが、ZIPAIRが一つ上のサービスを目指すなら、個人予約とともに、旅行会社と組むのが最善の方策ではないか。(石原)