2019.04.08

「令和」の入社式

 新元号が「令和」に決まった。「令和」について、様々な反応、意見が出ているが、天皇に即位される皇太子殿下の優しいお人柄と相まって、親しみやすい「令和時代」が形成されるものと期待する。
 新元号が「令和」に決まった4月1日、各企業で入社式が催された。旅行業界でも大手から中小まで人材確保が課題となる中で、JTB583名、HIS512名など多くの新人が旅行業界の世界に入ってきた。
 今年の入社式での各社長の訓示を聞いて印象に残ったのは、「新たなビジネスへの挑戦」だった。旅行会社に入っても旅行を企画するとは限らない。新ビジネスを担当することもある。新入社員にもそれが求められている。
 JTBの高橋社長は、めざすべき社員像として「自律創造型社員」になることを新入社員に求めた。「第三の創業期」として経営改革に取組むJTBは、企業文化・風土を変える途上にある。経営改革と企業文化の変革を両立させ、新たなビジネスの創出につなげることを強調した。
 また、HISの澤田社長は旅行業はもとより、ホテル、電力、ロボット開発、植物工場など多様な事業分野で活躍することを新入社員に期待するとともに、継続の重要性を説き、「石の上にも三年」で最低3年は頑張ることを求めた。
 JTBやHISに限らず、日本の大手企業は技術革新の急激な進化に伴う経営変革を迫られており、新入社員も様々な事業分野に配属され、旅行とは全く別の業態で働く者が増えてくるのだろう。
 JTBの高橋社長が語るとおり、大手旅行会社の競合相手は既存の旅行会社ではなく、旅行業ではないグローバルなプレイヤーだ。しかし、その企業も、いずれは他のプレイヤーに取って代わられるという予測し難い競争を強いられている。
 一方で、この2社を追うKNT-CTはウェブサイトを刷新して個人旅行事業の再構築、日本旅行はグローバル戦略を進める。ウェブ戦略やグローバル化は時代の流れだが、そうした中で、阪急交通社の松田社長は「デジタル革命の近年のIT化の流れの中で、従来の旅行代理店という立ち位置から、旅行商品メーカー、旅行アドバイザー、旅行企画プレゼンターとして、顧客に寄り添う企業へと進んでいきたい」と新入社員に語った。
 OTAと対極にある中小の旅行会社がよく語る言葉だが、松田社長のこの言葉から「旅行業」を思い出した。以前は「旅行代理店から旅行会社へ」「旅行業の確立」などが業界の課題として挙げられていた。
 JTBが自前主義を捨て、得意分野を持つ外部企業と協働することを打ち出しているように、新しいビジネスを自前で行うことには限界がある。例えば、OTAと同じ土俵で競合することは、事業規模からどんな大手企業でも圧倒的な不利は否めない。松田社長の発言は、ある意味「潔さ」を感じるが、この先の旅行業界が取り巻く環境変化の中で、どこまでいけるか興味深い。
 航空業界もANAとJALが入社式を開催した。今年は、昨年の飲酒問題の不祥事を重く見て、ANAホールディングスの片野坂社長は、社会人としての酒やSNSとの付き合い方に触れるなど厳しい自己管理と行動規範を求めた上で、「ANAグループは安全が全て」と強調した。JALの赤坂社長も飲酒事案に触れ、人命を預かる仕事に就く重要さを強調した。「全員が安全とは何か再確認をする必要があることを強調した。
 「安全」はサービスではない。絶対条件であり、その上で航空会社は利用者にサービスを提供する。飲酒問題については論外で、夢を持って入社した新入社員に対して、まずはこうした不祥事を起こしたことを詫びるべきだ。その上で、ネットワークや新たなビジネスなどのサービス展開を語ってほしかった。
 今やLCCを含む外航が、日本発着国際線の主役となりつつある。毎年のことだが、日本の航空会社の特異性を感じる入社式だった。(石原)