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2024.05.07

WING

米政府の旅客保護の新規則、IATA「運輸省権限を超越」

 大幅な遅延・欠航で自動的・速やかな払い戻し義務

 米運輸省が去る4月24日に発表した旅客保護のための「払い戻しおよびその他消費者保護規則」という新たな規則が、波紋を広げている。国際航空運送協会(IATA)は、「規制緩和された航空業界を再び規制する規則であり、米運輸省の権限を遥かに越えたものだ」と糾弾。同じく新たに制定された「航空会社の付帯料金の透明性向上規則」についても、シームレス性を低下させ、航空会社のオプションサービスの価格競争を低下させるものであり、「これらの2つの規則によって、航空会社のコストは引き上げられ、最終的には航空券価格に上乗せされる」との見解を示した。
 航空会社や代理店を戦々恐々とさせている「払い戻しおよびその他消費者保護規則」が制定された背景には、バイデン政権は2023年5月、旅客保護のための強化に乗り出すことを表明したため。2022年冬、大寒波が米国に到来した際、大規模な空の混乱が発生したことを受け、再発防止に向けた政策として新たな規則の検討が進められてきていた。
 その最終規則となった今回の「払い戻しおよびその他消費者保護規則」では、米国発着および米国国内線で大幅な遅延や欠航が発生した場合、航空会社および代理店は、自動的に速やかな払い戻しが義務付けられるというもの。具体的には米国発着の国際線の場合は6時間以上、国内線では少なくとも3時間以上の遅延、乗り継ぎ回数の増加、下位のクラスへのダウングレードなどが補償対象となる。
 さらに、オプションとして追加料金を支払った機内Wi-Fiが使用することができなくなったケースや座席選択が指定通りではなかった場合も、補償対象とする。加えて預手荷物の返却が大幅に遅れた場合についても、補償を義務付ける。国内線に関しては機体がゲートに到着してから12時間以内、国際線は15時間~30時間以内(フライトの長さによる)に荷物が旅客の元に届けられなかった場合には、預入手荷物の料金を払い戻ししなければならないことが定められた。
 旅客にとってはこれまで、払い戻しを受けようとするならば、煩雑な手続きが必要だったが、航空会社および代理店は「自動的」かつ「速やかに」払い戻ししなければならない。その払い戻し期限については、クレジットカードで購入された場合には7営業日以内に、その他の支払い方法の場合は、20暦日以内に払い戻すこととした。