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ニデック、エンブラエルと合弁会社設立へ
ニデック・エアロ、eVTOL用電機駆動システム開発・製造
ニデック(旧日本電産)とエンブラエルは6月18日(パリ現地時間)、ニデックの米国子会社であるニデックモータ(NMC)とエンブラエルが、航空産業向けの電機駆動システムに関する合弁会社「ニデック・エアロスペース」(Nidec Aerospace LLC)の設立に向けた契約を締結したことを発表した。
※画像=日本からニデックがイヴのeVTOLのサプライヤーに選ばれた(提供:イヴ)
ニデック・エアロスペースはエンブラエル傘下でeVTOLの開発を進めるイヴ・エアモビリティのサプライヤーとして、電機駆動システムの開発・製造を進める計画だ。
ニデックによれば、同社は合弁会社に対して、eVTOLを空中に浮かせて推進するための駆動モータに関する技術やノウハウを提供する。一方のエンブラエルはモータの状態を管理し、周辺機器との連携を担う制御技術を提供する。
両社の最先端技術を活用することでニデック・エアロスペースは、eVTOL向けに電機駆動システムの開発・製造、販売を行い、将来的にはeVTOLのみならず、様々な電動航空機に電機駆動システムを提供する予定にあることを明かした。
また、この合弁会社はニデックモータが51%出資し、残りの49%をエンブラエルが出資する。その本社は米国ミズーリ州セントルイスに位置し、両社のブラジルやメキシコの既存工場を活用して製造を開始する計画だ。合弁会社は直ちに設立手続きを開始し、独禁法等の各国規制取得次第、両社の取締役会の決議を経て操業を開始するという。
エンブラエルのフランシスコ・ゴメス・ネト社長兼最高経営責任者(CEO)は「イノベーションは将来の成長の原動力であり、戦略計画の重要な柱」と前置きしつつ、「ニデックと戦略的パートナーシップを組むことにより、航空分野へ新しいソリューションを提供できることを非常に嬉しく思う」とコメント。さらに「航空市場における電機駆動システムの需要は急速に高まっており、ニデックとエンブラエルが手を組むことにより、持続可能な航空の未来に向けて、先進的な製品開発を着実に推進できると確信している」と話した。
BAEがエネルギー貯蔵システムを提供
DUCはローターとプロペラの供給が決定
また、イヴ・エアモビリティはニデック・エアロスペースのほか、BAEシステムズおよびDUCヘリスプロペラズ(DUC Helice Propellers、以下DUC)も、同社が開発するeVTOLのサプライヤーに選定したことを明らかにした。この3社がイブ・エアロモビリティの機体開発・製造において、最初のサプライヤーとして白羽の矢が立った。
BAEシステムズは高度なエネルギー貯蔵システムを、そしてDUCヘリスプロペラズは、eVTOL用のローターとプロペラを供給することが決まった。BAEシステムズのエネルギー貯蔵システムは、イヴの機体がゼロエミッションかつ低騒音で効率的に運航することを可能にするように設計される。この新しいエネルギー貯蔵システムは、輸送用バスやその他の大型車両向けに信頼性の高い電力と推進力を提供してきた同社の25年を超える知見を活用する。イヴはBAEシステムズのエネルギー貯蔵システムについて、航空宇宙分野で飛行に不可欠な制御システムを開発してきた同社の歴史と相まって、安全性、信頼性、効率性が求められるアーバンエアモビリティ(UAM)アプリケーションに最適なものと評価している。
DUCはイヴのeVTOLに搭載する計8基のリフトモーター用ローターとクルーズプロペラを供給する予定だ。フランスを拠点とし、米国にも拠点を置く同社は、プロペラ、ローター、ファン、その他カーボンコンポジット製航空アクセサリーの分析、設計、開発、製造、メンテナンスにおいて25年以上の経験と専門的な知見を有している。
今回のサプライヤーの決定についてイヴ・エアモビリティのアンドレ・スタイン共同CEOは、「最初のサプライヤーの発表は、当社のeVTOL機の開発における重要なマイルストーンだ」とコメントしつつ、「就航に向けて前進する中で、我々の目標は、期待を上回るのみならず、顧客が最も低い運用コストで安全かつ効率的に運用できる成熟した航空機を確実に製造・提供すること」を強調した。