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2019.06.11

WING

空幕、F-35A墜落原因を「空間識失調」と推定

空間識教育や訓練で安全確保、安全確認後飛行再開へ

 航空幕僚監部は6月10日、墜落した第3航空団第302飛行隊のF-35Aについて、事故要因はパイロットの「空間識失調」による可能性が高いと発表した。F-35Aの機体同士をリンクするシステム「MADL(マドル)」や、地上レーダーの情報などから分析した結果、要因を推定した。そのため安全対策として、今後パイロットへ空間識失調教育や訓練を行うとして、飛行安全の担保を確認次第、F-35Aの飛行を再開する方針だ。
 このF-35Aの墜落事故は去る4月9日19時27分ごろ、三沢基地の東約135キロ付近の太平洋上で訓練を行っていた4機編隊の1番機が通信途絶の上、レーダー航跡が消失。対戦闘機戦闘訓練の実施中に墜落した。約2ヵ月の間、周辺海域の捜索と平行して、マドルや地上レーダーなどから情報を収集。海中の捜索では事故原因の特定に至る情報を得ることができなかったが、地上に残ったデータなどから原因を推定するに至った。
 空幕によると事故当時、墜落約2分前の19時25分ごろ、墜落機が対抗機2機を訓練上撃墜した内容の報告を送信した。19時26分ごろ、墜落機は地上管制機関から米軍機との離隔距離を取るため、降下指示を受けて「はい、了解」と送信。高度約3万1500フィート(約9600メートル)から左降下旋回を開始した。19時26分15秒前後に、左旋回指示を受けた墜落機は左旋回後に「はい、ノック・イット・オフ(訓練中止)」を送信。このときの高度は約1万5500フィート(約4700メートル)で、地上管制機関などからの聞き取りでは、落ち着いた声だったという。左旋回を開始してから訓練中止のメッセージを送信するまで、墜落機の平均降下率は時速約900キロ以上の急降下姿勢だった。
 そして19時26分30秒ごろ、レーダー航跡が消失し、直後に墜落した。訓練中止の送信から約15秒の間、墜落機の平均降下率は時速約1100キロ以上の急降下姿勢を継続したことになる。直後に墜落したものと推定。その間には緊急脱出が行われた形跡が確認できなかった。機体は、激しく損壊して部品・破片などが海底に散乱した。

 

事故直前まで機体は正常に作動
急降下も有効な回復操作見られず

 

パイロットへ空間識失調の教育・訓練
G-LOC教育、機体の点検で安全確保

 

※写真=墜落から約2ヵ月、推定される事故原因が判明し、再発防止策を打ち出した