ウイングトラベル特集
【潮流】次世代への離陸を問う
2月も折り返しを迎え、寒波に見舞われたかと思いきや、穏やかな気候の日もあるという、まさに「三寒四温」の状況となり、季節は着実に進みつつある。そのような中で旅行業界の動きを見ると、次世代を見据えた動きが目立ってきた。
KNT-CTホールディングスは第三四半期の決算発表とあわせ、2027年4月をめどにホールディングス本体とグループの近畿日本ツーリスト、クラブツーリズム、近畿日本ツーリストブループラネットを統合し、一社化する方針を決めたと発表した。
同社は再編の理由について、国内の人口減少が加速し既存マーケットの縮小が見込まれるなど、外部環境の変化に伴う課題を克服し、持続的な成長を実現するためだと説明している。
大手旅行会社の動きを俯瞰すると、先を見据えた設計図づくりが同時多発的に進んでいる。JTBは2035年を見据えた長期ビジョンを策定し、「『新』交流時代のフロンティア企業」を掲げた。交流創造を切り口に社会課題の解決とツーリズム産業の持続可能な発展に貢献する企業像を目指すという。
日本旅行は2030年までの中期経営計画を公表し、「顧客と地域のソリューション企業グループ」の実現を掲げた。2030年以降の発展・成長に向け、今年からの5年間を「構造変革期」と位置付け、事業を推進する方針を示している。さらに、エイチ・アイ・エス(HIS)では澤田秀太氏が社長に就任し、新体制のもとで次の時代の姿を描く取り組みを本格化させようとしている。
日本旅行業協会(JATA)が2月26日からオンラインで公開する「JATA経営フォーラム2026」は「旅行業 新時代への滑走路」を掲げ、ディスカッションやセミナーを行う予定だ。どのような議論が交わされるかは公開を待つことになるが、再編、長期ビジョン、中期計画、新体制といった動きが重なっている現状を踏まえると、日本の旅行業の中核を担う企業や関係者は、2026年を「離陸準備の年」と位置付け、備えを進め始めたと見ることができるだろう。
国内に目を向ければ人口減少は確実に進み、旅行に出かけようと考える消費者の数は減っていく。その一方で、旅に出かける際に消費者自身が手配できる範囲は広がり、旅行会社の役割は従来の延長線上に置いておくだけでは成立しにくくなっている。
こうした環境下で、旅行者を受け入れる地域づくりに貢献し、その関与を強めることで事業領域の幅を広げようとする動きは、現実的な選択肢の一つとなる。
とはいえ、ツーリズム産業は、人々の心に届く経験をもたらすビジネスである点で、製造業とは異なる価値のつくり方を求められる。
地域への貢献を掲げるにしても、単なる支援の枠にとどめず、旅する人の記憶に残る体験をどう生み出すかという視点を失ってはならない。これまで培ってきた知見を生かし、旅行業としての立ち位置を改めて問い直す必要がある。
加えて、次世代に向けた離陸準備が進むいま、新しいプレーヤーは登場しないものだろうか。交通機関と宿泊施設を組み合わせた移動や滞在の枠組みから一線を画し、例えば「目的」を先に立てて旅程を組み替える体験設計型、地域の日常に深く入り込む滞在型、あるいは学びやウェルビーイングと結び付けて旅の価値を再定義する取り組みが広がれば、産業の新陳代謝は加速する。
時代が変わっても、人類が地球上で生活する限り、旅への欲求が失われるとは考えにくい。言い換えれば、マーケットが消滅する可能性は小さいということだ。
異なるアプローチで市場を動かす存在が生まれるには、市場そのものが魅力を備えていることが前提となる。いま旅行業に携わる人々には、自らの成長とともに、業界の魅力をいかに高めていくかという問いが突き付けられているのではないか。
次世代への滑走路に立つ関係者が、旅への想いを馳せる人々の心を動かすことができるのか。同時に、同じステージへ歩みを進める同志を増やすことも視野に入れながら、滑走路から力強く離陸していくことを望みたい。(嶺井)
